私の幼馴染は、5年後の未来から死に戻ったそうです

みこと。

全一話

 幼馴染のロベルが、突然おかしなことを言い出した。


「俺は5年後の未来から死に戻った! レナ、今すぐカディス侯爵との婚約を解消するんだ!」



 彼いわく。


 私の婚約者、カディス侯爵には、人妻の恋人がいるらしい。


 大人しそうな私を婚約者に据え、不倫の隠れ蓑にしていたけれど、事実に気づいた私がロベルに相談。

 そのことを察した侯爵によって、二人とも命を絶たれるんだとか。ロベルと私が密通してたという、無実の罪まで添えられて。



「それが私の5年後? ロベル、どこかで頭でも打った?」


「打ってない。一度死んだけど」


「……その話を信じろと? なんで今更惑わすようなこと言うの? 私の告白を断ったくせに。侯爵家から縁談が来る前に、私と婚約してくれてたら良かったのに」


 恨みがましく彼を見る。


「だって俺は貧乏子爵で……。レナにはもっと良い縁談があると思ったから……」

「うちだってしがない伯爵家よ。我が家から侯爵家へ断るなんて無理だわ」

「レナ!」

「もう帰って! 貴方あなたを諦めた、私の心をかき乱さないで!」


 盛大に叫んで、そして5年。




(ロベルの言った通りになったわ)


 訪れた侯爵家別邸で、私は婚約者の浮気現場に直面していた。


「やれやれ。手頃な家の娘だと思っていたのに、とんだ詮索好きだ」

 そう呟くカディス侯爵のかたわらには、しなだれかかった王妃様!


 何と彼の不倫相手は王妃様だったのだ。


 それは秘密を死守したくなるはずだ。

 バレたら破滅しかないもの。


「残念だ、レナ。君にはお飾りの妻になって貰う予定だったが──」


 死守って、"相手を殺す"という意味じゃないけど!?


 私に向けて侯爵が剣を抜いた、その時。


「そこまでです!」


 扉が開いて、頼もしい声が場に響く。


「なっ、第二騎士団長!」


 侯爵が驚く中、入室したロベルが私を庇う。

 我が幼馴染殿は、騎士団長になっていた。


 5年前に、5年後の未来で私を守れず、あっさり殺されたことが悔しかったそうだ。

 剣の腕を磨いた彼は、今や国王直属の精鋭。


「侯爵には諸国との関税を不正操作し、横領した嫌疑が掛かっています。王妃殿下、度々の外出について陛下がお尋ねです。お二人ふたりともご同行ください」


 犯罪と、不倫の証拠。

 全て王の元にあると伝えると、侯爵も観念したらしい。


 侯爵家有責で婚約を破棄するため、時間を掛けて慎重に探った成果。



「く、いつから気づいていた?」


 うめく侯爵に、私とロベルは声を揃える。



「5年前!」



 いてた未来を無事変えて。


 今後はロベルと、人生歩んでくわ!

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私の幼馴染は、5年後の未来から死に戻ったそうです みこと。 @miraca

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