第8話 にぶい男
二人ともパトカーに乗せられ近くの派出所で事情を聞かれた。
やはり、先程のマンションの住民が、酒を飲んで騒いでいる未成年がいると通報したらしい。
確かにビールは飲んだし、マンションの階段に座っていたが、それ以外人に迷惑かけることなどしていない私達は話しが少し違うと抗議した。
警察官はとても優しく話してくれた。
警官 『マンションの住人が不快に思ったんだろうな。人目につくとこで飲んじゃだめだよ。せめて友達の家とかさ、私も高校生の時飲んだりしたから気持ちは解るよ。 でもね、お酒飲んでそのまま返す訳には行かないんだよ。事故起こしたり怪我でもされたら大変だからね。』
私達 [すみませんでした。』
警官 『君達は見た感じもかなり真面目そうだし、穏便に済ましてあげるけど、保護者に迎えに来てもらうルールだからね。それだけは避けられないからね。』
私達 『はい。わかりました。』
実は私が幼い頃、母子家庭だったが私が9歳の頃母親は病気で亡くなってしまった。
それからは叔母に育てられていた。
その叔母はかなり厳しく、成績が悪かったり、約束を破ったりするとよく叩かれていた。
高校に進学した後、厳しさも収まり割と放任されていたが、
私 『やばい。今回は殴られるかもしれない…』
M 『どうしたの?顔が青いよ。大丈夫?』
私 『う、うん。大丈夫。多分、殴られると思う。』
M 『ハハハ。私も。しかも、男と一緒だし。』
私 『はっ!そ、そうだよね。Mちゃんのお父さんにも謝らないと…』
その時、Mちゃんの父親が来た。私が謝ろうとした瞬間、Mちゃんに蹴りを入れて警官に止められていた。
私は恐怖で何も、何も言えなかった…
Mちゃんの父親は私と目を合わせる事なくMちゃんを連れて帰って行った。
多分、私の事を悪い友達だと思ったに違いない。
もう二度、Mちゃんに逢えないかもしれない…
そんな予感がしていた。
そして、叔母が迎えに来ると思っていたが、叔母の娘さんが迎えに来た。S姉さんだ。
S姉さん『アンタはもう。何やってんだか…』
私 『ごめんなさい。』
S姉さん 『もう良いよ。帰ろう!』
夏は終わり、少しずつ秋の気配を感じる季節になっていた…
あの事件依頼Mちゃんと逢うことは…
なかった……
次第にロータリーには誰も集まることはなくなった。勿論、ロータリー以外で個々にあってはいたが…
あの時……あのマンションの階段で…Mちゃんは……
今更気づく。誰もいないロータリーで1人心の中で叫ぶ!
『俺…俺、俺も、Mちやんの事が好きだー!』
そして何故か…松田聖子の『瞳はダイヤモンド』が頭の中でリピートしていた。
そして…私の暑い夏は終わりを告げていた……
おわり
夏の日の思いで 天野 みろく @miroku-amano2025
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