第6話 勝って兜の緒を締めよ

「いまだ、うてー」

 北条氏綱が叫ぶと足軽鉄砲隊が一斉に発砲した。河原に火縄銃の轟音が響きわたった。義明の体には多数の鉛玉が命中。義明は吐血した。

「一騎打ちに助太刀とは、卑怯者め」

 義明が氏康に太刀を振り下ろそうとすると、今度は背中に大量の矢が降りかかった。

「義明殿。義明殿。義明殿!!!」

 氏康が倒れる義明の受け止めたとき、義明はすでに絶命していた。

 これで、北条家は堀越公方と小弓公方を討ち死にに追い込んだことになったのである。


 悲嘆に暮れる氏康に、氏綱が馬で近づいて新しい兜をかぶせた。

「江戸に帰るぞ。兜の緒を締めよ」


 その後、北条氏康は率先して自ら下剋上の象徴と名乗るようになった。それは、主君筋を討ったことに対する自らの戒めであり、同時に、領国内で規律のためであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

更級千年松物語 国府台合戦編 乙島 倫 @nkjmxp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画