第2話 ハルノヒ

春の陽気が漂うキャンパス、桜の花びらが風に舞う中、清原涼音は心を決めていた。彼女は、佐々木翔太をデートに誘う決心をしていたのだ。友美に背中を押されて、勇気を振り絞って図書館へ向かった。


翔太は相変わらず建築の図面に没頭していた。そんな彼を見つけて、涼音は深呼吸をして声をかけた。「翔太さん、ちょっといい?」


翔太は顔を上げて微笑んだ。「涼音さん、どうしたの?」


「実は……明日、桜を見に行かない?桜の木の下でお花見しようと思って」涼音は少し緊張しながら提案した。


「お花見か……いいね、ぜひ行こう」翔太は快く応じた。


その夜、涼音は友美に報告した。「友美、明日翔太さんとお花見することになった!」


友美は喜びながらも、ちょっと意地悪な笑みを浮かべた。「いいじゃない!でも、涼音、お花見って言ったって何を持って行くの?」


「え、そんなの何も考えてなかった……!」涼音は慌てて答えた。


「大丈夫よ、涼音。私が手伝ってあげるから、翔太さんにいいところを見せてあげなさい!」友美は涼音を励ました。


次の日、二人は約束の場所で会った。キャンパスの外れにある静かな公園。桜が満開で、青空に映えるその光景はまるで絵画のようだった。


「ここ、すごく綺麗だね」と翔太が言った。


「うん、ここが好きなんだ。特に春になるとこの場所が一番美しいと思うの」涼音は微笑みながら答えた。


二人は桜の木の下に座り、持ち寄ったお弁当を広げた。涼音が友美と一緒に作った手作りのお弁当には、彼女の心遣いが感じられた。


「本当に美味しいよ、涼音さん。ありがとう」翔太は感謝の言葉を述べた。


「どういたしまして。翔太さんと一緒に過ごせて嬉しいわ」涼音は照れくさそうに微笑んだ。


その頃、友美は大和と共にカフェでお茶をしていた。友美は涼音との関係について悩みを抱えていた。


「大和、ちょっと相談があるの」と友美が言った。


「どうした、友美?」大和は真剣な表情で彼女を見つめた。


「実は……私たちの関係って、どうなんだろうって考えてしまうの。涼音と翔太のように自然に進んでいけるのか、ちょっと不安なの」友美は率直に気持ちを打ち明けた。


大和は少し驚いたが、すぐに笑顔を見せた。「友美、俺たちは俺たちのペースで進めばいいんじゃないかな。焦らず、お互いをもっと知っていけば、それで十分だと思うよ」


友美はその言葉に少し安心した。「そうね、大和。ありがとう、少し気持ちが楽になったわ」


一方、美咲はキャンパスの音楽室でピアノを弾きながら、涼音と翔太の姿を思い浮かべていた。彼女は自分の音楽の夢について考え始めていた。


「涼音さん、翔太さん、あなたたちを見ていると、本当に自分の夢を追いかけることが大切なんだと感じるわ」と美咲が自分に言い聞かせた。


その瞬間、美咲は決意を新たにした。「私も自分の夢に向かって進むわ!」


桜の花びらが舞う中、涼音と翔太はお互いの存在を確認し合い、新たな一歩を踏み出そうとしていた。その時、突然の出来事が彼らの前に立ちはだかった。


「涼音!」声が響き渡り、涼音の元へ急ぎ足で駆け寄る男がいた。涼音は驚きの表情を浮かべ、翔太もまた戸惑った。


「拓也……どうしてここに?」涼音は冷静を装いながら尋ねた。


「お前を探していたんだ。話がある」拓也は涼音の元カレで、突然現れた彼に翔太は困惑した。


「今はその時じゃないわ、後で話しましょう」涼音は毅然とした態度で応じた。


「ダメだ、今話したいんだ」拓也は強引に涼音の腕を掴んだ。


翔太はすぐに立ち上がり、拓也に向かって言った。「彼女が嫌がってる。手を離してくれ」


拓也は一瞬、翔太を睨みつけたが、涼音の冷静な視線に気付き、しぶしぶ手を離した。「わかった。後で必ず話そう」


拓也が去った後、涼音は深呼吸して落ち着こうとした。「ごめんね、翔太さん。あの人は私の過去の一部なの」


「気にしないで。君が大切だから、君のことを知りたいんだ」翔太は優しく答えた。


「ありがとう。あなたの言葉に救われるわ」涼音は微笑み、二人は再び桜の下で過ごす時間に戻った。しかし、その出来事が二人の関係に一抹の不安を残すこととなった。

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