第3話 君はロックを聴かない
春が終わり、初夏の陽気がキャンパスを包む頃、翔太は清原涼音の音楽の趣味をもっと知りたいと思い始めていた。涼音のバンドがライブをするという噂を耳にし、翔太は彼女のパフォーマンスを直接見てみたいと決意した。
その日の夜、キャンパス内の小さなライブハウスで涼音のバンド「スプリングブリーズ」が出演することになっていた。翔太は少し緊張しながらライブハウスに向かった。入口で見かけた涼音の親友、中村友美と伊藤大和もいた。
「翔太、今日は涼音のバンドを見に来たんだね!」友美がニヤリと笑って声をかけた。
「うん、涼音の歌をもっと聴きたいんだ」と翔太は答えた。
「それならいい席を確保しないとね。大和、行くよ!」友美は大和の腕を引っ張り、翔太をライブ会場の中央に連れて行った。
ライブハウスの照明が落ち、静寂が訪れた。その瞬間、涼音のバンドがステージに登場し、観客から歓声が上がった。涼音はマイクを握りしめ、観客に向かって微笑んだ。
「皆さん、今日は来てくれてありがとう。次の曲は『君はロックを聴かない』です!」
涼音の声が響き渡り、バンドが演奏を始めた。翔太はその瞬間、涼音の情熱的なパフォーマンスに心を奪われた。彼女の歌声は力強く、そしてどこか切なさを感じさせるもので、翔太の心に深く響いた。
涼音が歌い始めると、観客も一緒に口ずさみ、会場は一体感に包まれた。翔太は涼音の歌声にさらに惹かれていき、自分の中に新たな感情が芽生えていることを感じた。
一方、美咲はピアノの前に座りながら、涼音のパフォーマンスに感化されていた。彼女は自分の音楽の夢に向かって進む決意を固めた。涼音の情熱的な演奏が、美咲の心に火をつけたのだ。
「私も、涼音みたいにステージで輝きたい」と美咲は心の中で誓った。
大輝はそのライブの瞬間をカメラに収めながら、心の中で微笑んでいた。「この瞬間を絶対に逃すもんか」と彼はシャッターを切り続けた。
ライブが終わると、翔太は涼音に近づき、感想を伝えた。「本当に素晴らしかったよ、涼音さん。君の歌声にますます惹かれてしまった。」
涼音は照れくさそうに微笑んだ。「ありがとう、翔太さん。あなたが来てくれて、本当に嬉しいわ。」
その時、友美が大和に向かってニヤリと笑った。「ねえ、大和。私たちも何か始めない?」
大和は驚いた表情を浮かべながらも、友美に応じた。「何を始めるつもりだ?」
「私たちもバンドを組んでみない?」友美が冗談を交えて提案した。
「バンドか……友美がボーカルなら、俺はドラムでもやろうかな」と大和は笑った。
友美は笑いながら大和の肩を軽く叩いた。「じゃあ、まずは楽器の練習から始めるわよ!」
その一方で、美咲は自分のピアノ演奏をさらに磨くことを決意し、大輝は写真展の準備に一層力を入れることを誓った。涼音のライブが、彼らに新たな刺激を与えたのだった。
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