こんな感じだったから、俺には仲間はいらなかった。

 いや、正確に言えば、仲間を作れなかったというほうが正しいかもしれない。


 まず普通に女性は当然ながらアウト。

 俺が女性と話をしだすと、決まってユキが威嚇を始める。

 歯を剥き出しにして、「ガルルル」と唸る。

 そして、俺はユキを撫でたり、抱きしめてあげたりすると落ち着く。


 次に男性だが……。

 こちらも何故かアウトである。

 男性とは普通に話はできるのであるが、意気投合をして、それでは一緒に旅にしようというと、ユキは「ガルルル」と唸り始める。


 その繰り返しだった。


 そんなわけで、俺はユキと旅を続けることになった。

 俺は、ちょっと寂しい気持ちもあったが、そのような考えが頭に浮かぶたびに、ユキが身を摺り寄せてくるのである。

 まるで、俺の心がわかっているかのように、だ。


 ◇◆◇


 魔王との最終決戦の前に、駆け付けてくれた例の司祭はいう。

 

「実は既に知ってたことなんだが――、白狐というモンスターは、とてもご主人に尽くし、その命令を忠実にこなす。

 だから、基本的には危険な魔物ではない」


 そう言いながら、僕とユキに祝福を与える。


「しかし、同時に執着と嫉妬心が強いとも言われている」


 僕は司祭と握手をする。

 そして、ユキは司祭を鋭い眼光で睨んでいる。


「私は君たちに、魔王に対抗するための祝福を与えるためだけに来たのではない。

 私は、その白狐について、村では伝えられなかった本当のことを伝えに来たのだ。

 手遅れだったとしてもな」


 ユキのうなりは強くなる。


「そいつは、ヤンデレだ。危害を及ぼし、不幸を招く」


 僕は黙って、魔王城へ向かう。

 ユキは司祭を殺さんばかりに吠えるが、暫くすると俺に付いて来た。


「ご武運を。

 そして、さようなら、アレク。

 もう君の姿を見ることはないだろう」


 司祭はそう僕に告げ、遠くに見える魔王城を背に、街へと戻っていった。


 ◇◆◇


 そして、最初に戻る。


 俺は再び魔王が血を流して倒れているところを見つめた。

 そして、魔王の息の根は止まっていた。


 俺は魔王を倒したことによって、勇者としての任務を遂行した。

 しかし、それを祝う人間は誰もいないだろう。


 俺はユキと二人きりで魔王城で暮らすのだ。

 

 ユキは白狐から人間の姿になり、そして再び言う。


「……やっと、二人きりになりましたね。アレク様」

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ヤンデレ白狐、勇者より強い アイアン先輩 @iron_senpai

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