第3話

 鍋島 麻衣。


 謎の女子の名前が明らかになった。黒髪で古賀さんより短いショートカット。身長は平均くらいで褐色の肌が健康的に見える。話を聞くところによると古賀さんとは同じ小学校でクラブも同じだったという。その割には古賀さんは肌白いなーと思いながら見ていると古賀さんは視線に気付いたのか自身の袖を捲る。


「私はすぐ赤くなって全然焼けないんだよねー。」


 突如目の前に白くてきめ細かな肌が現れる。古賀さんは気にする素振りもなくそのまま腕を持ち上げ一通り自身で確認している。視線を感じ、そちらを向くと古賀さんと目が合い顔が熱くなるのを感じる。しかしすぐに初対面の女子の肌を不躾に見てしまった事実に気付き、一気に血の気が引く。


「ご、ごめん! ジロジロ見ちゃって!」

「え? あはは、そうだよね。私も何かごめんね! 女子だけのノリのつもりでついやっちゃった……って、いたぁ!」


 急に悲鳴が聞こえたと思い顔を上げると、古賀さんの後ろで拳骨を握っている鍋島さんが見える。


「もー、殴ることないじゃん!」

「アンタが不用心な事するするからでしょ! もう中学生なんだからそこは気をつけなさい!」


 抗議の声を上げる古賀さんに一切取り付く島もない鍋島さん。本当に仲が良いんだな、と思っていると教室内の学生が疎らになっていることに気付く。どうやら大分時間が立っていたようだ。


「親も待ってるだろうし、そろそろ俺らも帰るよ。」


 俺の言葉に二人も言い合いを止め、教室を見渡す。


「あれ、皆帰っちゃってるね。私たちも親が待ってるだろうし帰ろっか。」

「あー、ごめん。まだ準備してないからちょっと待ってて。」


 どうやら帰る準備もせずこっちに来ていたようで鍋島さんが自分の席に戻っていく。ここまで話をしてて先に帰るのも何かと思うので待つことにする。


「全然先帰っちゃってていいよ?私もまだ準備してなかったし……。」

「あー……じゃあお言葉に甘えようかな。じゃ、お先に。」


 机の上の鞄を取り肩に掛けるとヨコと一緒に教室のドアを開け出ていこうとする。


「佐山くん!」


 後方からの声に振り返ると古賀さんが席を立ちこっちを見ている。


「また明日。バイバイ!」


 微笑みながら胸の前で小さく手を振る姿に目を奪われ曖昧な返事しか出来ず手を振る事しかできなかった。

 教室を出て廊下を歩いていると親友がニヤニヤしながら声をかけてくる。


「春斗、顔真っ赤だよ。」


 ––言われなくてもわかっているよ。


 火照った顔を冷まそうと手で扇ぐもどうやらしばらく冷めそうにない。

 やはりおれは思っている以上にちょろいようだ。

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思春期男子はかなりちょろい ダンナ @shino1952

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