『白い火葬場』 その2
ぼくは、猛烈な白い炎に包まれてしまった。
身体が、ばらばらになってゆくように思った。
きらきら輝く、つぶつぶに分解され、ぼくは、炉の中に拡がった。
しかし、意識は消えなかったのだ。
これが、幽霊と言うものだろうか。
ぼくは、出口を探した。
炉の中に出口があるはずはないだろう。
しかし、みたまえ、蒸気機関車の炉は、しばしば開閉するではないか。
製鉄所の巨大な溶鉱炉も、地獄の鬼達だって、きっとうろうろ逃げ惑うだろうに、と思えるような炎を上げる。
しかり。
見えたのである。
出口がある。
遥かな彼方だが、明るい光が差し込んでくる。
ボッスの絵画の、あのトンネルだけが、あたかも見えているようだ。
ただし、円錐形というわけでもない。
もちろん、あれは、遠近法かもしれないが。
ぼくの、ばらばらの身体が、我先にと、そちらに向かって殺到してゆく。
『まちたまえ。きみたち。』
ぼくの意志が必死に追いすがった。
白い炎は、常に行く手を遮ろうとする、獰猛果敢な、ケルベロスみたいだ。
さらに、猛烈な重力が、後ろから掛かってくる。
『ああ、また、扉が閉まる。』
いつもそうだ。
いつも、ぎりぎりになる。
しかし、いつだって、やっとこさ、潜り抜けては来たのだけれど、そうだ。おこぼれみたいにね。
ぼくは、光の粒たちと、その明かりに、ついにすがりついたのだ。
🙊
第2章 おわり
『白い家』 序章・第1章・第2章 やましん(テンパー) @yamashin-2
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