『白い火葬場』 その1
そこは、全てが白だけだった。
床も、壁も、天井も、真っ白だ。
ただ、火葬場の釜の入り口だけは、青色の筋に彩られている。
すると、白い衣装に身を包んだ合唱団が現れた。
ぼくが入っている合唱団だ。
ピアニストさまが、暗い短い前奏を弾き始めた。
それは、もう、すぐに判る。
ガブリエル・フォレさまの『レクイエム』の『イントロイトゥス』だ。
『レクイエム エテルナム
ドナ エイス ドミネ
エト ルクス ペルペトゥア
ルチェアト エイス』
(永遠の安息を 与えたまえ
永遠の光で 照らしたまえ。)
しかし、合唱団は、すぐに、違う、聴いたことのない音楽を歌い始めたのだ。
『燃え上がれ! 白い炎!
ぼくらに降りかかる
あらゆる 罪悪を
焼き尽くせ。
許せない罪も
許しがたい罪も
許したい罪も
すべてを 焼き尽くせ
おお、白い炎よ!』
すると、青色の縁取りをされた釜の蓋が、ゆるり、開いたのである。
すべてを飲み込む、釜の蓋が。
内部では、すでに、白い炎が踊っていた。
ほんとうに、真っ白な炎だ!
『ありえない。』
ストレッチャーは、釜の手前のガラスの門を潜って止まった。
お坊様らしき人が現れたのが、正面の液晶画面に映された。
『おお。いまや、罪人を、
あなたに、委ねます。
白い炎よ!
罪深き人を許したまえ。
あなたの白い力で
清めたまえ。
焼き尽くしたまえ。』
合唱団
『燃え上がれ! 白い炎よ!
ぼくらに降りかかる
あらゆる罪悪を焼き尽くせ
許せない罪も
許しがたい罪も
許したい罪も
すべてを焼き尽くせ!』
お坊様
『焼き尽くしたまえ!
おお、白い炎よ。』
すると、床が動いた。
ぼくの乗ったストレッチャーが、その白い炎の中に、入ってゆく。
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