第6話 怪奇的記事

牧田は「私が先程お見せした絵を描いたのはこの旅館近くの山奥ですが、そこで百年程前に考古学調査が行われたのです。それについての記事です」と付け足す。俺は、読み進める。


「多摩文理大学のX教授は、関東地方の或る山にて、旧石器時代に造られたと見られる石造の建物が発見されたこと、その建物の横に有る湖もしくは池が養殖場として利用されたとみられる形跡があることを発見した。さらには、同山においてサピエンスでもネアンデルターレンシスでもない謎のおそらくは人類の化石を発見した。


X教授は、城や養殖場や謎の人類の化石の正体を明かすことに在職中も退職後も研究を続けたにも関わらず、80歳を過ぎた辺りから自身の功績を消すことに尽力しはじめたのだ。


X教授の発見した謎のおそらくは人類の化石は、多摩文理大学博物館に所蔵されていたのに、どこかに消えた。おそらく、X教授の工作によるものだろう。そんなこともあって、現在は、その謎の人類の研究は進んでいない。」


まずは一息ついた。ここまでの内容を整理しつつ、先程の絵を何となく思い返す。再び読み進めた、


「果たして、謎の人類の化石の正体は?


X教授は、自身の功績を消して回る以前、友人の教授に自身の説を語っている。さらにその友人の教授は、弟子にふとその説をしゃべったこともある。


我々INBOUのteamは証言をたどる調査によって、X教授が消した教授自身の説へ辿りついたと思われる(伝言ゲームよりも不確かなことではあるものの)。それは2つある。一つは、現生人サピエンスとネアンデルターレンシスは兄弟姉妹とも例えられるが他にもまだ兄弟姉妹もいてそれが謎の人類の化石だとする説。一つは、ゴリラの一部が進化したものが謎の人類だとする説(この場合「人類」ではなくて「類人猿」か?)。



また、X教授は感傷的な一面もあったと思われる。


なぜなら、友人教授にこうも語っていたそうなのだ、『この謎の人類は多人数で暮らせる城を建てたあたりに仲間意識の強さを伺えるが、現在は絶滅していると思われることからして、絶滅前の最後の一頭になってしまった者もいただろう。その悲しさや絶望感はどれ程のものだっただろう』と。



我々INBOUのteamは現在も調査中である。」


これで文章は終わっている。俺はスマホから顔を上げて、牧田にスマホを返す。


俺は、「まさか絵のゴリラとこの考古学調査の化石と、同じ生物だと言うのですか?」と言った。言ってから閃いた。「まさかとは思うが、小学生の見たゴリラ人間の正体も、この化石の子孫とでも?」


牧田は「ご名答です。あなたならその答えにたどり着くと思った」と言った。


では万引き犯は本当にゴリラ人間なのか?俺が半信半疑に思っていると、牧田は「先程、私が描く絵は信じてはもらえないかもしれない方法で太古世界を探って絵にしていると述べました。その意味を申し上げましょう」と言った。



以上「土の記憶-目撃談と絵画【短編コズミックホラー小説】」続きは「」へ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

土の記憶(上)【コズミックホラー小説・短編】 柿倉あずま @KAKIKURA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ