新入りと心理テスト
藤泉都理
新入りと心理テスト
己の正義を信じてこの敵対組織にスパイとして潜入する事に成功したの。だが。
「お~い。新入りちゃ~ん。ちょっくら、心理テストしてみない~」
「はい」
初っ端から酒臭い親父に肩を組まれて、吐きそうです。
(酒臭い酒臭い酒臭いっ!うええええっ。酔う吐く酔う吐く。肩も組まれて気持ち悪いっ!生温かい!生ぬるい!もう全部が全部気持ち悪いっ!)
「でね~。この心理テストに答えたら二つのグループにわけられるんだよ~」
「なるほど」
鉄仮面を必死に貫き通しながら、酒親父に渡された紙を見る。
なんて事はない。
はい、か、いいえ、で答えて行った先に、酒親父が言うように、二つのグループのどちらかに振り分けられる心理テストである。
ただ、二つのグループが何かはわからない。
クエスチョンマークとエクスクラメーションマークしか書かれていないのだ。
(うええええ。何だろう。まあどうせ、「酒好き!」と、「酒好きではないだと?」とかくだらないやつだろうけど)
そう、思っていたのだ。
本気でのほほんと。
だが一分後。
戦慄を覚えて身体が凍りつく。
はい、か、いいえ、で答えては進んで、エクスクラメーションマークに行き着いた時、酒親父が言ったのだ。
あ~よかった~。新入りちゃんは~。スパイなんかじゃなくって~。と。
「じゃあ。訓練、頑張ってネ」
「ハイ」
酒親父、いや、この本部の司令官は、心理テストの紙をゆっくりと引き抜くと、肩を二、三度軽く叩いて、立ち去って行った。
(気を………引き締めない、と)
心身にこびりついてしまった、生ぬるさと酒臭さを、けれど、振り払う努力は行わず、立ち去って行く司令官の背中を、見えなくなるまで睨み続けるのであった。
(2024.6.7)
新入りと心理テスト 藤泉都理 @fujitori
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