第2章 よし、ダンジョンへ行くぞ!
第24話 よし、ダンジョンへ行くぞ!
ダンジョンへ入るための初心者講習から1日あけて2日後、今日はいよいよ初めてダンジョンへ入る日だ。
間の1日は、情報の整理や足りない物品の購入などにあてた。ダンジョンへ入るとはいっても日帰りの予定なので、それほど準備は必要ない。
しかし、初めてのダンジョンでテンションが上がっていて、ちょっと余計なものまで買ってしまった。
『忘れ物はないよな?』
『肯定。準備は完了しています』
『よし、ダンジョンへ行くぞ!』
朝一の時間はやはり混雑するようなので、いつものようにその時間を避けて、午前9時ごろにゆっくりとダンジョンへ向かった。
ケルブにあるダンジョンは、4つとも丘に埋もれるような位置に入り口がある。
平時には階段がかけられ、入り口のある地下まで降りられるようになっていて、そこを通ってダンジョンへ出入りする。緊急時にはこの階段が外され、魔物が地上へ上がって来るのを防ぐ。
全てを防ぐことはできないが、地下で魔物の同士打ちを誘う効果もあり、その有用性は過去の実績によって証明されている。
『おわっ、なんかぎしぎし言ってるんだけど、大丈夫か?』
階段は木製で、作り直すことも考慮してなのか、ずいぶん簡素な作りだ。1段下りるごとに、ぎしぎしとそこら中が軋み、崩壊して落ちてしまうんじゃないかと気が気でない。
『肯定。バイオロイドの3次元空間上に表出した体重は、人間の範疇を超えていません。11次元上の質量については、女性体であることを考慮して秘匿中です』
『何やら気になるワードが出てきたが、階段が大丈夫そうだということは分かった』
それでもおそるおそる3階分くらいありそうな階段を下りきった。
『よし、第一関門は突破したな』
朝一には、冒険者が列をなしてこの階段を下りるのだという。絶対にその時間には来ないと決めた。そんな状態の階段を下りるくらいなら、飛び降りた方がマシだ。
降りた先は小さなホールになっていて、数人の冒険者が休憩していた。初心者用ダンジョンだからか皆若い。おじさんになってから冒険者に登録した人とかがいたら、さぞかし浮きまくることだろう。
俺にも視線がバシバシ突き刺さっているが、それは無視してさっさとダンジョンへ入る。
入り口は、パッと見はただの洞窟と言われても違和感がない。ウィキおじさんことケンリッジさんによると、特徴的な魔力によってすぐに分かるらしい。
『シオン、何か通常の空間と違う点はあるか?』
『否定。計測可能なすべての数値は通常空間と相違ありません』
『ワンチャン近付けば何か分かるかと思ったけど、ダメだったか』
魔力を検知する方法については、いまだに良い案がない。そもそも魔力って何だよって感じ。エネルギーなの? 粒子なの? 素粒子なの?
魔法使いは魔力と相互作用しているっぽいのに、俺とは一切相互作用してくれない。バイオロイド差別だ。
『推定。魔力に意識がある可能性』
『もし本当に意識があって魔力が差別してるんなら、1発ぶん殴る』
『否定。これまでの情報から、魔力に実体があるとは考えられません』
いや、ここはファンタジー世界なんだから何が起こるか分からない。実体がないと思っていた魔力に実体があったとしてもおかしくない。
『とにかく中に入るぞ』
『了承』
ダンジョンへ入っても特に感じるものはなかった。「空気が違うっ!?」とか「何かを通り抜けた感覚が……」とかない。バイオロイド的にはただの洞窟。
内部は幅が3メートルくらいの通路になっていて、一見するとただの洞窟だが、洞窟にしては地面が平坦で歩きやすくなっている。これはダンジョンかどうかの判断材料になりそう。
『出てくる魔物は、スライムとゴブリンだったな』
初心者ダンジョンについての情報をおさらいしておこう。
まずダンジョンの環境は洞窟風で、幅3メートルくらいの通路と、直径10メートルくらいの小部屋で構成されている。階層の奥には次の階層へ移動するための階段があり、全5階層のダンジョンだ。
出現する魔物は、1階層がスライムとゴブリンで、2階層以降はゴブリンしか出てこない。しかし、2階層以降のゴブリンは武装していることがあり、剣や槍、弓なんかを使って攻撃してくるので、油断すると手痛い反撃を食らうことになる。
『おっ、いた、スライムだ』
『捕獲を推奨』
『1匹目は普通に倒す。捕獲するのは2匹目からな』
『了承。危険度を推定。戦闘時出力の最低値を10とした場合、スライムの危険度は0.01未満です』
短剣で突き刺すと、プツリという手ごたえを感じた後、風船が割れるようにスライムが弾けた。スライムは最弱なので、これで倒せる。危険度が0.01未満というのも納得の弱さだ。
『解析。水分95%、たんぱく質5%』
『水もちみたいだな』
体がほぼ水分でできていて、ゴブリンなんかはスライムを捕まえて水分補給することもある。ちなみに人が飲むのには適していない。俺なら問題なく飲めると思うが、率先して飲みたいとも思えない。
『未知の病原菌を検知』
『おいおい、大丈夫なのか?』
『肯定。免疫機能は問題なく働いています』
『よし。じゃあ次は捕まえるぞ』
クラスごと異世界に召喚されたら、ひとりだけバイオロイドでした 蟹蔵部 @kanikurabu
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