第31話 白南風吹き抜く些細な一時

「来てやったぞ~」

 いつもなら「おー」とか、「うぃーっす」とか、声が返ってくる。、もう返ってこないんだな……俺はレジ袋から持ってきたアイスの封をバリバリ開ける。コーヒーミルク味のわけわけできるうまいやつ。この時期辺りから下校にスーパー寄って買って帰る。今年はちょっと早い。

「これお前のな」

 2つに分けたアイスの片方を置く。 

「てか聞いてくれよ、来週の――――――」



「――あ、そろそろ帰らんと。手伝いあるんだったわ」

 これは俺が片しておいてあげよう。アイスを袋に入れて「また来るわ」と伝える。何も返ってこないのはわかってるのに……

「……ん?雨?」

 頬に水が触れた。見上げても雲1つない青い空が広がっている。

「まぁいっか」

 背を向けて来た道を戻る。俺の肩に手を乗せるような背を押してくれるような涼しい風が吹き抜けた。

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五月雨事件 南場牡丹 @9danhila3

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