【帰還後】

 わたしのおかげでみんなが無事に帰れたの!

 やっぱりわたしは天才的で究極の美少女!


「わっ!」


 わたしは、最後にいた場所であるところの、たーちゃんの勤務している交番に戻ってきた。たーちゃんは普段通り、警察官の格好をしている。ホンモノの警察官だし。


「ただいまなの!」

「急に消えるからびっくりしましたよ……」

「マダム・ヴィスタさんの能力のせいだと思うの」


 空間と空間をつなげる能力には天平パイセンっていう前例があるし。マダム・ヴィスタさんの能力が『招待状を開けた人をあの屋敷に招待する』なら、なんらおかしくはないし。


「ティーパーティー、どうでした?」

「お友だちが増えたの!」


 連絡先聞くの忘れちゃった。でも、アーサーはゲームの大会の常連さんらしいし、たっくんは神佑大学の大学院生らしいから、会おうとすれば会える。


「今度、俺にも紹介してくださいね」

「なら、みんなで焼肉に行くの!」


 もちろん、たーちゃんのおごりで!


 ***


「……あれ?」


 スプリンクラーから噴射された限りなく薄められた紅茶の不思議な力によって、MARSのゲハ(※ゲーミングハウスの略)に戻ってきた。頭をなでても、水滴は付いていない。


「夢オチ、ってことっすか?」


 答えは返ってこない。起きて、自分宛の招待状を見て、それから大広間に飛ばされたはず。なのに、ベッドの上にいる。過去に異世界から帰ってきたときも、ベッドの上にいた。そのときと似ている。


「やば!」


 スマホを見たら、スクリム(※練習試合のこと)の時間が迫っていた。道理で誰もいないはずだ。いつもスクリムが始まるギリギリまで寝ている理玖りくすらいない。


 リーダーにしてオーダー(※チームに指示を出すポジション)の自分がいなかったら、このチームはてんでバラバラ、みんなが自分勝手に動いて壊滅する。飛び起きて、寝巻きのままで部屋を出た。夢の中では普段着だったっすね……。


 ***


 四方谷よもや家のソファーの上で、俺は目を覚ました。モアは横に座っていて、口をへの字に曲げている。


「タクミだけティーパーティーに行くとは、ずるいぞ!」


 この地球を侵略するために宇宙の果てからやってきた宇宙人のアンゴルモアさんは、自分が置いて行かれたと勘違いしていた。代わりに行ってほしかったよ。モアじゃ謎解きできないだろうけどさ。


「我も行きたかった」

「行けたとしても脱出できないでしょ」


 他二人の謎解きの内容は、紅茶ができあがるまでの間に聞いた。最近流行りの脱出ゲームに出てきそうな問題だったな。最初のレーザーの仕掛けはなんだったんだよ。


「我は建物を壊せるぞ」


 ふんふん、と得意げに鼻を鳴らすモア。華奢なモデルさんの十文字じゅうもんじれいさんの姿でそういうパワープレイするの、風評被害がすごそう。


「帰って来れたからいいじゃん。次の機会があるだろ」

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「マダム・ヴィスタのティーパーティー事件」 秋乃晃 @EM_Akino

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