第10話 編集後記

 私は、精神障碍者になって、多くのモノを失ってきた。誰かが全て善人で、彼らの言う事を聞けば、いつか幸せになれると……。そこに、リスクを取って、自分の思った道を、進む勇気はない……。

 自分の信念に基づき、単純な仕事につけば、それなりに、努力して、成果を上げただろう……。

 今よりもっと多くのお金を稼ぎ、ガールフレンドも、自分に見合った、彼女を、作れたのかもしれない……。

 内部障害がなければ、それは、可能だったのかもしれない……。不健康な身体は、不健康な思考をもたらし、その結果、私の活動の場は、あまり広くなかった。


 無用な消費や、騙されることに、心を痛め、心に鉄格子を作り、その中で、生きてきた。

 そんな人間に、怨嗟(えんさ)はあっても、愛などなかった。


 人は、愛がないと生きていけないという……。

 私は、そのお陰で何度も死にかけてきた。

 病気の心は、苦しくて、こんな苦しみが、一生続くのなら、生きていけないと……。


 人間の一生は、夢のようなものだから、楽しく生きないと損だよと言う人もいた。でも、精神障碍者には、そんな事をさせまいと、睨みをきかせる人達が、沢山居て、臆病な私は、その人達を恐れ、自由に生きていくことが出来ない……。


 自由には、責任が、ついて回る。

 精神障碍者には、自由になるのを止めさせて、常に責任に、フォーカスさせて、脅して、それなりの生き方を、提示して、それから逸脱することを、許さないのだ……。


 更に、健常者なら、大きな失敗をしても、2,3回くらいなら、立て直せるが、障碍者は、一度、失敗したら、下降する癖が付き、どんどん下降して、元の位置に、這い上がれなくなる。


 どうゆう人生を送りたいのか? 私は、今それに、向き合っている。

 何の為の人生か? 誰の為の人生か? 


 人間、死ぬ気になれば、知恵が出る。

 その時が、来たら、私は、笑って暮らせるのだろうか?

 今の私では、想像できない……。

 

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とある事業所(作業所) あらいぐまさん @yokocyan-26

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