第9話 ラスト

 翌日の朝、今日の作業は草取りだ、午前10時、守は、ゴウとコトゲと、支援員を連れて、畑の草取りを始めた。

 炎天下の中、遅遅として、作業は進まなかったが、彼らは、真面目に作業をしていた。

 休憩の後、午前の11時に、後半の作業を始めた。

 その中で、守は、ゴウに言った。

 「自信がつけば、社会人になれるよね……それについて、ゴウは、どう思っているの?」

 ゴウは言った。

 「考えてますよ」

 「ふん~」

 ゴウは、しまったという顔をしていた。


 守は、草を抜きながら、言った。

 「この作業は、ただの草取りじゃない、仕事の仕方、人生の渡り方の勉強なんだよ、忍耐力や、仕事の緻密さ、人間関係の作り方などがね……」

 ゴウは、「えっ、えっ」と言って聞いていた。

 ゴウに、少し考える時間与えると、ひと時の間が空いた。


 その間に、コトゲと話をした。

 「コトゲさん、歯科医院は、土日は休みなの?」

 「土曜は、やってます」

 「噂じゃ、コトゲさんの家って、金持ちの家じゃないの?」

 「そうですー金持ちです」

 守は苦笑しながら、話を続けた。


 「今度、プラークを取りに行こうか?」

 「わっ、わっ」

 コトゲは、大喜びだった。


 守は、ゴウの頭が冷えたことを確かめて、再び話し始めた。

 「ゴウ、声掛けが潰れてしまう、大きな原因は、声掛けをしても、返事がないことなんだ、返事は、「はい」で良いんだ、そうやって、いつも、私は、此処を盛り上げているんだ……。いつも、やっているだろ!」

 すると、ゴウとコトゲが、声をそろえて「はい」と言った。

 その様子を見て、守は、少し救われた。


 なぜなら、守は、彼らのリーダーになっていることを、実感したからだ……。こんな、感覚は、中学の剣道部の部長を、していた時でも、感じる事はなかった。


 時間が来て、草取りの作業を、終えると、守と、ゴウと、コトゲは、本部に帰っていった。

 ご飯を食べて、タバコを吸いに喫煙所に行くと、修がやってきた。

修は言った。

 「やぁ、やぁ」

 彼には、彼の生きかたがある、守は、彼のように、なりたかったが、結局、自分の能力が、少し、拡張しただけだった。

 それでも、彼らとの交流は、守の幸せな、思いを感じさせた。


 確かに、「済みません」の説明は、彼らに、しなかったが、それは、誰かが、きっと、するだろうと思って、この活動の幕を降ろした。





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