第8話 苦難
次の日、守は、事業所にやってきた。
そこで、コトゲとイナズマの様子を見ていたが、どうも、自分を避けているような気がする。そこで、守は、一旦、行動しないで、休みを取って、落ち着いたら、彼ら に、アドバイスをしていこうと考えた。
今日の作業は、外販の商品のクリーニングだった。自分や彼らとの間に、目立った変化もなく、普通の日常がそこに、あった。
守は、彼らに、何もしてあげられないことが、心のつかえとなり、気分が暗く沈んだ。
やがて、休憩の時間、イナズマが同僚に、「お願いします」と、言った。
それを、見た、守は、「今の良かった、ちゃんと、出来るじゃない」と言って、イナズマを、ほめた。イナズマは、鼻高々だ。
イナズマは、自分の将来を、守に、訴えてきた。
「僕は、1年後くらいに、就労したいんだ」
「そうなんだ」
イナズマの目に力がみなぎる。
「ここの工賃は、安く、一般の会社の時給で、2,3日働くと、1カ月の給料になるんだ」
そういって、イナズマは、薄給の現実を、守に訴えた。
「そうね」
守は、頭を搔いた。
「僕は、成長したんだ」
「分かる」
そう、一言、守は、イナズマに言った。
イナズマのネックになっていた、「お願いします」と言う事が、出来るようになったことで、そして、彼の心の声を、聴いて、守は、親近感を感じた。
ふと、守は思った。
……コトゲは、何を思っているのだろうか? ……
そこで、コトゲを探し、一人でいるコトゲを見つけると、守は、彼に、話しかけた。
「お話しても、いいですか?」
「はい」
「コトゲさんの症状が、良くなったね、何かあったの?」
コトゲは何も言わなかった。
守は、言う……。
「修の話だと、コトゲさんは、歯科医院の、お坊ちゃんなんですね」
コトゲは、体をくねくねしながら喜んだ。
すると、守は言った。
「今度、仲間を連れて、そこに行くから……」
コトゲは、その話を聞いて大喜びだった。
守は、コトゲに、申し訳なさそうに言い始めた。
「私は、5つの言葉、「理解したら『はい』という、何いかしてもらったら『ありがとう』、何かしてもらうには、『お願いします』、皆との連帯の合言葉である『お疲れ様』、「間違ったら、謝る」、その言葉である『済みません』の言葉を、伝えたいんだ」
コトゲは、真剣な顔で、守の話を聞いた。
守は、そんなコトゲを見て、話す前に思っていた印象より、話してみたら、明らかに違うそれは、どこにでもいる、普通の若者のように守は見えた。
守は、志納としているが、彼らには、輝く未来がある。もう、彼らには、これ以上のことはできない、ただ、見守るしかできない……。
守にとって、それは、少し、寂しかった。
5月31日、守は、最後もピースである、「済みません」の言葉を教える事にした。
彼は、その為に、今までの事を、記した記事を集めて、振り返り、今後の展開に備えた。
そこには、再現性のある、スキルの完成形があり、最初に立てた、目標の達成は、楽勝であるかの様な、予感が漂っている。
この事で、守は、少し、成長した。
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