あるいは我らの世界について

屑木 夢平

あるいは我らの世界について

 目覚めは死である

 死ぬためには生まれなければならない


 歯磨きは忘却である

 今日食べたものの味をきれいさっぱり掻き消してしまう


 食事は飢えである

 飽食を知らずにあればあるだけ食べようとする


 母は呪いである

 最も大切なものを与えて二番目に大切なものを奪っていく


 猫は雲である

 どこから来てどこへ行くのか誰も知らない


 涙は海である

 その一雫にはありとあらゆるものが詰まっている


 重力は後悔である

 最寄り駅へ向かう足取りをいつも重たくさせる


 空は溜め息の墓場である

 青ざめた地層を見上げる僕はずっと窒息している

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