第3話  同居者は人気者!?

合コンが終わって家に帰った。

お風呂に入る気力もない。

「合コンって、こんなに疲れるの?」




後で聞いた話だけど、夏帆かほ達が言うには

三男はあの後、すぐに帰ったらしい。

わたしが席から離れていた時間は約30分くらいで、戻って来ないわたしと、三男の事を皆んなは、『いい感じ』になって2人で抜けたんだと、思っていたらしい。


それを聞いて、そんなワケないじゃん!! と

ついつい声を張り上げてしまう。だって..

「もう大変だったんだから〜(泣)見に来て欲しかった!! 何かあったのかな、って心配してほしかった〜〜(大泣)」

と、怒り泣きしてしまった。



ベッドの中に入ると、合コンでの出来事が

勝手に脳内再生される。

三男の事は、本当に思い出したくなくて

「いやいやいやいやっ!!」と、頭を振って蹴散らす。


でも『ジョン』は......


助けてくれたのはもちろんだけど

わたしが落ち着くまで一緒にいてくれた。

ジョンが来てくれなかったら...と思うと血の気が冷める思いがした。


「いいヤツじゃん...ジョンって...」



そういえば、ジョンと初めて会ったのは

医大の図書館だった。あの人も、学生なんだろうか..

また、会えるかな。


心の中があったかくなる


それも束の間、ある事を思い出した。


「でも....人のこと呼ばわりするのは、酷くない!?」



そんな事を考えていたら 眠れなくなってしまった。




    ———————————



翌朝。目が覚める。

ほとんど寝ていないせいか、頭が働かない。


——今日って何曜日だっけ....?


半分眠ったままの脳ミソをフル回転させる。

今日は日曜日だと答えが出て、安心してまた眠りにつく。


眠りに落ちる前に

『一階が賑やかだな、何だろう』と思う。

でも、眠気には勝てなかった



    ——————————————



「ごめんなさいねぇ、うちの娘で」


「いえ、お構いなく。それよりもすみません。こんなに良くして頂いて」


「いいのよ。こっちが悪いんだから...それで、床なんだけどね、リフォーム頼んだ会社と連絡がとれないのよ。どうしたのかしら...」


「そうですか....」



   —————————————



何かの音で目が覚める。


スマホで時間を確認したら

『11時48分』だった。

ヤバい寝過ぎた、、、と後悔。

『ぐぅ』とお腹がヘルプを出す。


「お腹減った...」


寝起きのまま一階のリビングへと降りた。


寝ぼけまなこ

「ママぁ、お腹減った。朝ごはんある?」

と聞くと

「ちょっと亜美あみ!! お客さん来てるんだから、そんなだらしない格好で降りてこないでよ」

と、怒られた。

「お客さん?」と、ソファを見ると、そこには誰かが座っていた。


その人は、黒い髪を短く綺麗に整えて、耳に小さなリングピアスをしていた。

丸い大きな目を、これでもか というほどに大きく見開いていた。


どこかで見た顔だ

いや、「どこかで」なんてそんな曖昧なものではない。



「え?もしかして、ジョン!?」


ソファに座っていた人物は

わたしの事を「オッサン」と笑い。

昨日の合コンで、ピンチを救ってくれた

ジョンだった。


「あれ?2人とも知り合いだったの?」


「まあ...そんなところです。」

ジョンが微笑みながら言う。


「なんだ、じゃあ丁度よかったじゃない。お互い全くしらないよりは..ねぇ♫」


「そうですね」


「ちょっと待って!! なんで、じょ....じ、ジョンが、ここに居るのっ!?」


「え?こないだ言ったじゃない。床の話」


床の話!?

「あ、あの...アパートの床が抜けて、直すまでにウチにいるって話? だって、アレは....!!」


女の子じゃなかったの!?


「女の子とは言ってないわよ。とは言ったけど♫」


はめられた...完全にはめられた!


———嘘でしょ....

わたしはジョンの顔を恐る恐る見る。

ジョンは、大きい目を細めて、歯並びのいい白いキレイな歯を見せて笑っていた。

「よろしくね、亜美ちゃん♫ 」




   ————————————



こうして始まった私たちの同棲....同居生活。

もちろん、納得はしていないけど、どうにもならないのが悔しい。


彼の名前は、上条かみじょうしゅん

わたしのひとつ年上で、まさかの医大生だった。

(それで図書館にいたのか...)

それにしても、人よりカッコよくて、頭が良いって..なんかムカつく。


「なんでシュンなのに、って呼ばれてるの?。」

「かみう しゅでジョン。」

なるほど...

「でも、シュンじゃダメなの?」

「え?だって、ジョンの方が外国人っぽくて、カッコいいじゃん?」


それ、三男のブラックボーイと変わんない...



その日の夜は

したくもない『歓迎パーティ』をした。



出掛けていたパパも帰ってきて、ジョンと2人で「ご馳走だなぁ〜♫」とはしゃいでいた。

全く、なんでこうも皆んな 能天気なんだろう。 


テーブルに座って、『いただきます』をしようとした、瞬間。

なぜか頭の中にの食事風景が流れた。


(なんだろう、これ....)


昔の記憶かとも思ったけど、今まで会った事のない人たちだ。

うん、記憶にない。


「亜美、どうした?」


パパに名前を呼ばれて、我にかえる


「うぅん、なんでもない」


「じゃあ、食べましょう」


ママの一言事で、ジョンが待ってましたとばかりに、箸を取る。


「やっぱり、みんなで食べるご飯は楽しいですね」

と、ジョンが言った。

その顔はちょっと寂しげだった。

わたしの勘違いだったかもしれないけれど....




    ——————————————



また新しい朝が来た。


朝からジョンと顔を合わすのが恥ずかしくて、無駄に1時間早くに起きて家を出てきてしまった。



そして、お昼休み。

わたしは親友の夏帆かほ茉莉まつりと、医大の敷地内にある食堂にいた。


「ねぇ、実習どこになった?」

話題はもっぱら来週から始まる臨床実習の事だった。

茉莉まつりが頬杖をして、憂鬱そうに言う。

「わたし小児科だった。わたし一人っ子だったせいかさぁ、、子ども苦手なんだよね。ギャン泣きとかされたら、どう対応していいか分かんないの。保母さんとか、小学校の先生とか、マジ リスペクト」


「亜美はどこ?」


「わたし....? 外科...南病棟」


「うっっっっわ、、」


「...........御愁傷様です」


「いやいや、縁起悪いって」


「あそこ、毎年やべぇらしいじゃん?」


「毎年、先輩泣いてるよね」


わたしの初回の実習先は

「外科 南病棟」

厳しい所で有名。

絶対に行きたくない実習先No.1。

特にわたしにとっては、私生活も落ち着かないってのに、実習まで地獄でもう頭が破裂しそう。



「....あ、ちょっとごめん」

「何が?」

「鼻が....」

「亜美、分かってるよね!!」


分かってる...もう、オッサン呼ばわりされるのはごめんだ。

思いっきり いきたいのを、『グッ』と堪える


もう、なんて呼ばせない!!!


「....ぶぃーーーっくしっっ!!ぐっっ...!!」


夏帆と茉莉が「えぇーーーーっ..」と引いている。

堪えた結果、結局なんとも滑稽なクシャミになってしまった。

周りの人たちも引いてるのか、が起こった。

(いくら何でも、そんなにざわつかなくても...)

と、周りを見渡すと


ジョンが..


いつの間にかジョンがいて

お腹を抱えて、声を殺して笑っていた。

前屈みになったり、仰け反ったり、身体を捻ってみたり、笑いを堪えるのに必死のようだ。

「ぐっ..くっくっくっ...ぐふっ..くっくっ..」


わたしは、「ギロっ」と睨んでみせる。

そんなわたしと目が合うと、ジョンはまた大笑いし始めた。



   ——————————————



周りがざわつき始めたのは、わたしのクシャミではなく、ジョンのせいだったらしい。

隣には、あの日一緒にいた、髪の毛サラサラハイセンスボーイもいた。


サラサラヘアのイケメンが現れたら、そりゃザワつくか。

それにしてもサラサラヘアの彼は、近くで見るとより一層カッコよかった。

とにかく顔が整い過ぎている。それでも少年のような無邪気な雰囲気もあって、ついつい見惚れてしまうほどの美形だった。




隣で、夏帆と茉莉が軽くパニックになってる。

なぜなら、ジョンと、サラサライケメンが、わたし達の隣に腰掛けたからだ。




「あの....すみませんが、あっちにもたくさん、席空いてますよ」


他人のフリをして、ジョンに話しかける。


(わざわざ、隣にすわって人の事、笑い者にすんなっ!!)

と、口パクで追加する。


すると、まさかのサラサライケメンが

「ごめんね、コイツが、ここがいいって言うから」

と爽やかな笑顔で返してきた。


不意打ち笑顔の凶器は、わたし達 3人を

いとも簡単に天国へ昇天させるほどの威力だった。

「テツ、余計なこと言うな」

ジョンが、短く言った。

膨れてご飯を食べているジョンに、わたしは気がつかなかった。


なぜなら


「テツって言うんだ、あの人♡」

と、盛り上がっていたからだ。


   ——————————————




その頃、噂の「外科 南病棟」では、どよめきが起こっていた。


「はじめまして。今日から研修医として、こちらで お世話になります 鳴海なるみじんです。よろしくお願いします」


ナースステーションから黄色い声とともに拍手が沸き起こる。

女性スタッフの目がになっている。


簡単な自己紹介の後、すぐにカンファレンスが始まった。


それは20分ほどで終わり、通常なら看護師達は自分の仕事へと散り散りになるのだが、その日は違った。

女性スタッフの8割が新しく来た研修医の周りに集まっていた。


鳴海なるみ♡ 分からない事があったら、遠慮なくに聞いて下さいね♡」


「はい、ありがとうございます」

上品に笑う鳴海なるみに女性スタッフからため息がもれる。





1週間後。

この病棟で、斉木さいき亜美あみ鳴海なるみじんと出会う事になる。


運命の歯車が周りだす。




— 続く —




沢山の応援ありがとうございます

この場で一言感謝申し上げます

(´∀︎`,,人)♥︎*.



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