第2-4話 一言で表せるなら苦労はしない
『デバイス』配布後に移動した体育館横に設置されていたプレハブ小屋の中は見た目通りの大きさだった。
人数分が座れるだけの長机とパイプ椅子はこの試験のために用意されたプレハブ小屋であることを伺わせる。
「それでは改めて試験合格おめでとう。私は君達の担任となる
黒のショートヘアの頭を掻きながらいまだに防弾ベストを着けたままの弥生先生が自己紹介を行う。
「君達には自己紹介も兼ねて
:――――――――――――――――:
名前:
SNS名:やよい先生
表示
:――――――――――――――――:
名前は本名固定のためデバイスを受け取った時点で設定されているが、SNS名、表示
ただし、
ちなみに、掲示板アプリとかでは『やよい先生@戦士』のように表示されるとか。なお、匿名投稿も有りらしい。
「それでは自分の
「ありさ先生~、この『
金髪ギャルっぽい女子が大きく手を振って質問をした。名前は……聞いてないな。
「ん? ああ、簡単に言うとそれぞれの個性だな。[素早い]【武闘家】とかだと元々
『
先生の説明にあったように取得スキルに影響を及ぼすこともあり、特性と役職の組み合わせの影響は大事となるのだ。
『なあ、ワンコ、結局『
ふよふよとふらついている
今日のワンコは
『みんなに憑いてる眷属が決めてるぱう』
このアップデートされる世界ではゲームっぽいシステムのために
『やっぱりサイコロを振って決めたのか?』
『違うぱう。眷属がその人の性質を見て判断したぱう』
「ほほう、つまり、俺のはワンコが設定したということか……」
:――――――――――――――――:
名前:
:――――――――――――――――:
目の前に広げたステータス画面を指さすとワンコはそっと目を逸らして消えた。
「逃げやがったな」
神の眷属だから食べる必要はないと言っていたわりにおやつをねだってくるのだが、ここのところは量を制限していたのを根に持っていたらしい。
―― ピコン
デバイスのSNSの通知音がなる。
さくら@拳士「やほやほ。パーティ用のグループ作ったよ」
隣に座っている
カイ@冒険家「おま、となりなんだからしゃべれよ」
蒼真@武士「カイが最後なので帰りになにか奢りな」
みよみよ@まほーK「デザートフェア行きたい」
さくら@拳士「あー、それ私も行きたいと思ってたの」
「はい、ちゅーもーく! どうやら全員プロフィール設定も終わったようなので、今日の説明はこれで終わりとします。まあ、なにかあったらデバイスのSNSから問い合わせてくれ」
最後に保護者向けの紙の資料等が配られて推薦入試という名の入学説明が終わった。
なお、この時点で暫定的に探索者として国家公務員扱いとなるらしい。この辺りの仕組みは実際の運用を通して調整されていくとのことだ。
◆ ◇ ◆
「『探索者免許』に『モンスター図鑑』『アイテム図鑑』、『迷宮地図』か……どれもベータ版となってるけどかなり使えそうなアプリばっかだな」
「思った以上に人の世界の道具は便利ぱうね」
学校支給の『デバイス』には学校用のアプリだけでなく、探索者用のアプリもプリインストールされていた。
神の声から二ヶ月と経っていないのにアプリが揃っているのには理由がある。
これらのアプリは元々ゲームの補助アプリとしてスマホ用に開発されていたものを流用したとのことらしい。
AR用ゲームとして展開しようとしていたところに
「結局、あのモンスターの名前は『水饅頭』になったぱう?
ワンコがまだ一匹しか登録されていない『モンスター図鑑』を見ている。
「ああ、他はもっとしょうもないダジャレと厨二心あふれる名前だったからなぁ。って、
聞き捨てならない情報が聞こえたのをスルーはしない。
「ん、言ったことなかったぱう? ボクの同僚にあたるダンジョン側のシステム管理者ぱう」
「ワンコがプレイヤー側のシステムで、その同僚がモンスター側ってこと?」
こいつに同僚がいたことも驚きだが俺がプレイヤー側だけで良かった理由もわかった。
「そうぱう。
「なあ、ワンコ。一つだけ聞いていいかい?」
「ん? なにぱう。答えられることなら答えるぱうよ。あ、おやつ増やしてくれたら口も軽くなるぱう」
「いや、おやつはおいておいて、その【
ワンコは何を馬鹿なことを言わんばかりの表情を浮かべる。
「もちろん決まってるぱう。カイの言うところのミリしらぱう」
図書室ダンジョンの神話級モンスターの謎が解けた気がした……
TRPG風ダンジョンはじめました ~ミリしらTRPG β0.5~ 水城みつは @mituha
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