長年付き合っていた彼女に浮気をされて別れた29歳の俺、初めてマッチングアプリを利用してみたところ、何故か知っている女性とばかりマッチングをしてしまうのだが?(それも美女ばかり)

高たんぱくプロテイン君

第1話 彼女と別れたのでマッチングアプリを始めてみます


 俺の名前は佐藤 健、29歳。


 某イケメン有名俳優と同じ漢字の名前ではあるが、読み方は違う。


 そう。俺の名前は だ。


 思い出したくもないが、昔から俺はこの名前のせいで意味もなく、あの国宝級のイケメンと比べられて女性達からがっかりされることが多かった。


 学生時代などは、入学当初に教室に女性が押し寄せるのだが、皆が皆、俺のことをチェックするやいなや、落胆の顔で自分のクラスへと戻っていく


 何もしていないのにだ。


 そして、これまでの人生の中でそんなことが続いた俺が、今のひん曲がった性格になってしまったことは至って仕方のないことだろう。


 とりあえず、現在の時刻は夜の8時。

 俺のデスクの上にはブラックコーヒーの空きペットボトルが2本。


 連日の残業によって、生まれ持っての死んだ魚のような目に一層の磨きがかかった俺は、今も、今日中に終わる見込みのない資料作りを、なぜか今日中に終わらせようと無駄な行為をしている。

 

 一体、俺のこの人生はどこで間違えてしまったのだろうか。やはりこの名前を親に付けられた時点でもう終わっていたのだろうか?

 いや、他にも...


 でも、まあ、それでも何だかんだで俺も一応は人並みの幸せは掴めていた。いや、掴めていた...はずだった。


 そう。


 先日、大学の頃から付き合っていた、運命の女性だと思っていた彼女の浮気に気がついて、別れることになるまでは...。


 「おい、佐藤!飲みにでも行くか!」


 そして、この隣の同期のこいつ。彼女いない歴=年齢のブ男、木村に、そのことを一瞬で周りの奴らにバラされてしまうまでは...。


 「行かねぇよ」

 「何でだよ。励ましてやるって」

 「嘘つけ、俺の不幸をつまみに酒を飲みたいだけだろ」

 「正解!でも、奢ってやっから。今日はお前のおかげで今田さんとも楽しく会話ができたしな!」


 しかも何だ。今田ちゃんと楽しく会話?


 そうか。そういうことか。俺は知らぬ間にあの今田ちゃんにまで笑われていたのか。


 まあ、いいけれど。こいつのことだからまた面白くおかしく俺の不幸話を喋ってくれたのだろう。


 そうか。でも、今田 ちゃん...か。


 確か、彼女は今は27歳ぐらいか。


 


 彼女はくりくりとした大きな目と、これでもかと整ったスタイルが印象的な、この会社一と言っても過言ではない美女だ。


 それも、彼女はただ綺麗で可愛いだけではなく、いつも笑顔で愛嬌よし、誰にでも優しく気遣いもできる。そして、これでもかと人付き合いもいい女性。

 

 俺も一時期、同じ部署で彼女とは働いていたことがあるけども、喋っていて常に楽しかったし、本当にいい子だという印象しかない。


 俺のつまらないであろう話も、いちいち彼女は深堀してくれたり、屈託のない可愛い笑顔で笑ってくれていた記憶がある完璧な女性。


 まさに男の理想を具現化したような女性だ。

 

 「木村、いくら楽しく話せたとしても彼女はお前では無理だろ。どう考えても」

 「いやいや、今日はマジで話が弾んだから。彼女にめっちゃ質問とかされたし」

 「何の...?」

 「いや、お前が別れたことについて。俺の話が面白かったのか、かなり話のラリーが続いたからなー」


 そして、そうか。こいつのせいで俺はまた多大なる辱めを...。


 「今田ちゃん、彼氏いないみたいだし、マジでワンチャンねぇかなー」

 「いや、ねぇだろ。少なくても木村、お前にはない」

 「でも、この前に一緒にご飯も食べたぞ」

 「何人で?」

 「5人...」


 まあ、そんなことだろうとは思った。

 そもそもそも、あんなにもモテてきた彼女がお前や俺みたいな男を選ぶことは間違いなくないから。


 実際、仕事ができたり、顔がよかったり、色んなデキる男が彼女にアプローチをかけてきて玉砕してきたところを見てきたから、そこは間違いない。

 

 玉砕した奴らの話を聞いている限り、やはり彼女は人付き合いがいいから、ご飯に誘ったり、遊びに誘ったりすれば、基本的には二つ返事で来てくれるみたいだ。


 ただ、二人きりでと彼女を誘ったり、そういう雰囲気を出そうとすると何故か一気に壁を作られてしまうみたいで、まだ俺は彼女と二人きりでご飯等に行けた男の話を聞いたことはない。


 つまりはだ。


 そう。やはり、彼女には普通に彼氏がいるということ。当たり前だ。そもそも彼女ほどの女性に相手がいないわけがない。


 俺とかなり仲良くしてくれていたのも、おそらく、当時の俺に彼女がいて、そういうことには絶対にならないとわかっていたからだろう。それなら合点がいく。


 ただ、俺に彼女がいなかったとしてもだ。

 彼女ほどの完璧な女性に手をだすなんて恐れ多いことは俺は普通にしないし、今もそれは変わらない。


 現実味がなさすぎてまずそういう対象にはならない。


 「おら、とにかく飲み行くぞ。佐藤!」

 「いや、仕事が...」

 「どうせ、今日中に終わらないだろ、それ」

 「まぁ...確かに」


 確かにそれは同意見。どうせ終わらない。

 

 そして、明日にこの無理難題を押し付けてきたハゲに怒られる未来は変えられない。


 なら、まあ。もういいか...。


 「よし!今日はマッチングアプリに登録するぞ!マチアプマスターの俺がお前に色々教えてやる」

 「マッチングアプリ?」

 「おう、俺が招待してやるから、とりあえず2か月は無料な」


 いや、もちろんマッチングアプリは知っている...。


 でも、そうか。まあ気分転換にどんなものか、試しに無料期間だけなら登録してみるのもアリかもしれない。


 地味に大学の頃から彼女がいたこともあって使ったことがないから。


 まあ、どうせ、誰ともマッチングしないんだろうが...。



《あとがき》

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