私、雨巫女らしいです

黒月白華

第1話 雨森茜は雨女

『雨森ってさ、雨女なんじゃね!?』


 クラスで1番明るくて太陽みたいな存在の男子で隣の席の日比野充くんにそう言われて、私の一瞬でもときめいた心は壊れた。


 次の日の朝、コンビニで弁当を買い、学校に向かうバスに乗ったが、降りる気がしなくてそのまま終点まで行った。




 私は雨森茜。17歳。

 子供の頃からよくある学校行事は参加するといつも雨だった。


 明確なことはわからない。でも私は長い髪で地味で友達もいない暗いぼっちだったから、見た目で判断され、いつしか私のあだ名が


【雨女】


 となっていた。

 男子達からはいじめられて靴を隠された。



 幸い、親が転勤族だった為、一つの土地に長居することはなかった。


 でも、中学でも私は人の輪には入れず孤立していた。



 高校に受かった時は、思い切って長かった髪を肩まで切った。高校デビューで私は変わるんだ!!


 しかし、これまでぼっちだった女が、そう簡単に他人に受け入れられるわけがないし、勇気も出なくて結局、雨の入学式も1人も女子と話しかけられなかった。


 しかし、隣の席の爽やか天然イケメンの日比野充くんは私の心の癒しだった。


 見ていると晴れやかな気持ちになる。

 私みたいな地味な女にも気さくに


「おはよう雨森!」

 と声をかけてくれた。

 それだけでもう幸せだった!


 しかし、やはり、学校行事である野外学習は雨になり、体育祭も雨。私が休むと晴れた。



 しかも私はいつも折りたたみ傘を常備していた。一回、鞄から荷物がバラけた時に日比野くんが拾うのを手伝ってくれた。感謝しかないが、傘を拾い日比野くんは冗談で言った。


『雨森ってさ、雨女なんじゃね!?』

 と笑いながら。

 わかっている。そんなの。冗談言われたって。


 普通の子なら


『えへへ、そうかなー?』

 とか言っちゃうところなんだけど、私は、私にはその言葉は冗談でも禁句ワードの一つに当てはまった。


『あれ?雨森?何で泣いてんだ?』

 と日比野くんは慌てるが


『な、なんでもない……です!』

 荷物を受け取り私は逃げる様にその場を去って、次の日、コンビニで弁当を買って私はいつもの様にバスへ乗った。




 *


 冒頭に戻る。

 私は終点まで行き、降りた。運転手さんから変な目で見られた。


 降りた所でポツポツ振ってきたので私は傘を刺した。


「ああ…。知らない街に来ちゃったなあ」


 これから親に連絡が行く?捜索願出される!?補導される?



「……もう、どうでもいいか……」

 と傘を刺して、トボトボと歩いていたら、鳥居の側を通った。


「……折角だし、お参りしていこうかな……」


 私は神社の石段を登り始めた。

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