第3話 日比野くんの感動
「とりあえず、巫女様の世界を見せてください!」
と日比野くんはキョロキョロしている。
「えと……、巫女様じゃないよ、私」
「いいえ、貴方は巫女様です!雨が降っているのが証拠!」
「あ、雨なんてどこでも降るし……。あ、私が雨女だからってバカにしてる?」
と言うと日比野くんは
「は!?雨女とは?何の事でしょう!雨を降らせる恵みの巫女様に対してそんな物言いをした者がいると?」
「いや、昨日日比野くん、私にそう言ったし……」
他の人も昔から言うし。私の行くとこやイベント事には雨降るし。
「そうですか……。こっちの世界の僕が?ちょっと殴ってきましょうか?」
と言うので
「あ、あの。よく分からないけど本当にどうしちゃったんですか?日比野くん!しっかりして?」
と言うと日比野くんは
「はあ、まだ信用してもらえないのですね。これはじっくり話し合いたいです。
えと、下に降りていいですか?」
と石段の先を見ている。
じ、じっくりって…。
「う、うん。いいよ。あ、傘……さす?」
「か、傘!!僕の世界では使わなくなった物!!」
と傘見て感動してる!!?
「そういえば日比野くんずっとその装束で街に行くの?流石に目立つんじゃ?」
と言うと日比野くんは
「……そうですね。ちょっと着替えてきます」
と言い、また社に入った!
あれって勝手に入っていいのかな?
しばらくすると日比野くんはラフなTシャツにズボンを履いてきた。
制服じゃないんだ。
「では巫女様。行きましょう!!」
とわくわくしている。
ほ、本当に別世界から来たのかな??
石段を降りていき、街が見渡せる所に出て用水路や田んぼを見て日比野くんは
「み、水だ!!あんなに水がある!!水だーーー!!」
と叫ぶ。
い、一体何事なの!?
「日比野くん、落ち着いて」
「これが!落ち着けって!!だってみんなが見たら喜ぶ!!こんなに豊かな恵みが!!巫女様のおかげですね!?」
もう、何言ってんのかわかんないこの人。
しばらく歩き、ファーストフード店に立ち寄ると目がキラキラしてメニュー表を見つめる日比野くん!!
しかもお水がタダで置かれたことに感動して震えながらコップを持ち、
「の、飲んでいいですか?これ?お高いんじゃ」
「無料だけど」
どうしよう、頭打って記憶喪失かもしれないと今更ながら病院連れてった方がいいのかもと思った。
「む、無料……」
日比野くんがクラッとして机に倒れた!!
「日比野くん!しっかり!」
「はっ!すみません!びっくりしすぎて!!」
「いいから飲みなよ。水なんてたくさんあるよ」
「うっ!うう!で、ではいただきます!!」
と泣きながらただの水を大切そうに飲んでいる。それこそ無料だけに感無量で。
どうしよう、本格的にヤバいぞ。
「うまい!!ありがとうございます!」
「み、店の人にいいなよ。いや、やっぱり言わなくていいよ……」
恥ずかしいし。
「巫女様……」
「あの、私、巫女様じゃなくて雨森茜と言う名前が……。記憶喪失?」
と言うと、日比野くんは
「存じております!良い名前ですよね!!」
とにっこりした。
うぐ!私の様な地味な女に向けるスマイルではありませんごめんなさい!
それに良い名前とか言われたの初めてでどう返していいのかわからない。
「後で病院付き合うよ?」
と言うと日比野くんは
「ああ、まだ信じてなかったんですよね。すみません。
ですが、本当のことなんです!我が地球は今、雨が全く降らずに日々、水の取り合いでどこの国も余裕が無くて、水2リットルで1千万の価値にまでなっております!」
「は、はい!?」
「海の水も干上がりつつあり、魚類は全滅し、陸の獣も水が無いので死に絶えてきています!
私たちが生きるには別の世界から巫女様を連れてくることしかもう手はないのです。
そこで僕が儀式を受けてこちらに飛びました。巫女様の位置を特定して空間を繋げる儀式を施しました!」
と言う日比野くん。
「えと、何で私が巫女様なの?」
と聞くと
「雨に愛されているお方は、行く先々で雨が降り恵みをもたらす。しかし、我々の世界の巫女様は戦争により、犠牲になってしまわれた!!
そう、もう1人の貴方です!
だから違う世界から連れてくると言う使命が僕にはあるのです!」
と日比野くんはコップを握りしめて辛そうに言った。
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