香水瓶

@hr0827

香水瓶

二年前、店先に並んでいた香水瓶が

或る時机の引出しから出てきた。

二年もの間その内側に封じ込められた記憶や感情が

ひと押しの後悔によって放たれる。

あの紅茶の香りが

過去を美化しているようだった。

それによって私は、

果てしなく遠い処へ

未だ誰も知り得ない処へ

行ける様な気がした。

冬に目を背け、春を錯覚する。

そんな私の我儘だろう。

香水瓶を開けたことへの後悔は

計り知れないものであった。

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