共感してくれ

江来欠

分かってるさ

 時々無性に世界を恨みたくなることがある。分かってはいるけれども。大人なので分別はついてるつもり。そう言ってしまうことが子どもであるのかもしれないが。

 己の悪い癖は随分前からとうに理解しているのさ。たぶん誰よりもね。分かっているように見えないのかもね。己が分かっていることすら相手は分かっているかもしれないとさえ思うのだがね。そういう傲慢さもまた己の悪い癖なのだろう。

 まあまずまず世間を少しズレながら、しかし大幅にはみ出すことなく歩んできたわけだ。そこにある汚泥には目を瞑らなければいけないが、それさえ我慢すればなんだってうまく行くのだ。大体世の中の人間は皆同じようなことを考えながら口には出さないものだから。

 だけど分かってほしい。私はこの感情を持て余している。ああそうだとも。できれば誰かの脳と取り替えたいよ。たまに自分は自分らしくあればいいっていうけど、私はそんなのごめんだね。尊い考えだとは思うさ。美しい物語であれば私も感動するかもしれない。良い物語を読んだと、伝えゆくかもしれない。だが、己自身のことものとして考えるときっと尊さより欲が勝つ。足りぬものがほしいと思うだろう。ほしいもののために、必要なものを己は持っていない。こんな感情はいらない。まったくいらない。この自然発生する不快な衝動を私は捨て去ってしまいたい。

 不愉快だ、大変不愉快だ。世の中ってものは本当に不愉快ばかりで。己が中心に回ればいい。

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