転生悪役令嬢を愛する殿下は湯けむりに嫉妬する

三角ケイ

第1話 転生悪役令嬢を愛する殿下は湯けむりに嫉妬する

 僕の3歳年下の婚約者は可愛くて面白い。


「実は私、転生悪役令嬢なのです。ここは乙女ゲームの世界で私の20歳を迎える誕生日会で私は殿下に婚約破棄されて雪山に追放されるのです」

「よくわかんないけど君可愛いし面白いから破棄しないよ」


「君が作ったゆで卵、凄く美味しいね。黄身が半熟で白身が半凝固の卵なんて初めてだ」

「これは温泉卵といいますの。追放先の雪山には温泉があるそうなので試作してみました」

「僕は君が好きだから追放しないよ」

「好っ!?」


 可愛くて面白い僕の婚約者は努力家だった。調理法が広まると固茹で卵よりも食べやすいと多くの民に好まれた。


「ねぇ、どうして家畜に食べさせる赤い豆を煮ているの?」

「これは小豆と言って美味しい豆なのです。追放後、和菓子屋を営もうかと思いまして今から小豆餡の研究しているのですわ」

「僕は君を愛しているから絶対に離さないよ」

「愛っ!?」


 可愛くて面白く努力家の僕の婚約者は博識でもあった。小豆を薬師に調べさせた所、栄養価がとても高いとわかり、多くの民を病から救った。


 誕生日会前日。


「うわっ!着替え中だったとは済まない!もうすぐ僕らの結婚式だから打ち合わせに来たのだけど、君が着替え中だとは知らなかったんだ。……あれ?何故侍女は部屋に通してくれたんだ?それにしても、やけに布面積が少ない下着だね。とても似合っているけれど僕の理性は瀕死状態だよ。もしかして僕らの初夜用の夜着の試着をしていたのかい?そうか、やっと僕の気持ちが君に通じ……」

「ち、違います!これは湯浴み着なのだそうです。侍女が追放先の温泉が混浴だと教えてくれたのです。私は初めてお会いしたときから殿下をお慕いしていますので、殿下以外の男性がいる湯に裸で入るのは抵抗があると侍女に相談したら、これを用意してくれたのです」

「え?君は僕を最初から好きだった?なのに君は僕から逃げて僕のいないところでそれを着て他の男と混浴するつもりなのかい?それを僕が許すと本当に思ってる?」


 ブチッ!


「殿下?」

「どうやら僕らは深く話し合う必要があるね」



 誕生日会当日。


「殿下はどこにいるの?」

「殿下なら婚約者と婚前旅行に行かれたよ」

「雪山にある温泉を二人で楽しんでくるそうだ」

「一週間後帰ってきたら即、結婚式だと」

「そんな!誰よ、シナリオを変えたのは!?」


 転生ヒロインの嘆きは溺愛している婚約者にブチ切れてヤンデレ化した殿下の耳には届かなかった。

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