第3話 無名3 #高校生 #タヒネタ #夏休み

「あっつぅ…………」

ある夏休みの一日。部活帰りの私たちは暑さで頭がおかしくなりそうな中、帰り道を歩いていた。蝉のうるさい声が暑さを倍増させているきがしてきてイライラする。

「誰だよ、毎日30℃こえるような夏にした奴は……しかも来年はもっと暑くなるんで しょ?終わりだよこの世界。」

「ほーんとそれな。課題もばか多いし。」

「課題終わらん無理!時間を止められん?お前。」

「そんなんできるならとっくの昔にやってるわ、バーカ」

「だよねー、もう逃げたーい。未来真っ暗すぎてしょ笑」

「ほんとそれな!」

「勉強は下から数えた方が早いくらい頭悪いし、課題は終わらない。部活はみーんな試験合格して曲の練習に入ってるのに、私たちだけいまだに基礎練してるだけだし。未来はもっと暑くなって過ごしにくくなるし、最悪だよ。だからさ、

死なない?」

「え?」

さっきまでうるさく鳴いていた蝉の声が聞こえなくなり、時間が止まったような気がした。

「こんだけ未来真っ暗なんだよ?あの世に逃げたってよくない?」

はっと気付かされる。確かに、別にいいじゃん、死ぬんじゃなくて逃げるんだから。

「たしかに!!2人で夏休みの終わりにでも死のうよ!」

「いーね、夏休みの終わりってことは………8月21日?」

「そうそう!それまでせいぜい遊びまわる!!部活は全部休んで、課題も全部放置!!」

「いいねいいね!!じゃあまず何する?」

「全財産持ってグッズ買いに行かない?やっぱ推しにお金は全部貢がなきゃ。」

そう言うと彼女は浮かない顔をした。推しは違えど推しへの愛は同じくらいのはずなのに。

「どした?他のことにもお金使いたいの?」

「いや、そんなわけないじゃん。ただ、死んだ後、そのグッズどうするよ?」

「あー確かに。ん〜………グッズプレゼント企画するか。」

「おk、じゃあ遺言書に書いとくね。」

「うん。よろ。他に何する?」

「え〜二人でずっとゲームしたい。どーせどっちも人多いところ嫌いでしょ?笑」

「正解大卒。じゃあ引きこもり生活だね、あ、あと死に方どうする?」

「二人で睡眠薬飲んで死ぬ?海とかで」

「海は嫌かな〜、海って遺体魚にくわれて汚なくなるんよ。だからシンプル薬のんでベッドで死ぬでいい気する。」

「そうやね、別に死に方にこだわりないしね。あと夏休みの終わりに死ぬのってあれでしょ?いじめとかから夏休み逃げれてなのに夏休み終わるのに絶望した子が自殺するやつにまぎれないんでしょ?」

「あ、バレた?そーそーそれであわよくば大人達が勝手に基礎練試験で不合格ばっかなのに辛くなってーとか解釈してあのナゾの基礎試験なくなったらなー って」

「あーね、確かに無くなってほしいよねあれ、先輩方のお気に入りならんと受からんし。」

「んじゃ、大体決まったことだし、バイバーイ。また後で。」

「うん、また後で。」

8月21日に死ぬ、そう決めた8月1日の帰り道から日にちが減るのはとても早かった。 親のお小言にいらいらすることもあったけど、別にもう死んでしまうのだ、どうでもいい。あ、そろそろ時間か。

プルルルル…………プルルルル…………

『はーい、もしもし?』

「もしもし、いよいよだねえ………。」

『いよいよだね。薬と水持った?』

「持ったよ。遺言書の準備はおk?」

『バッチリ。そっちは?』

「机の上にしっかり置いてあるよ」

『そ、じゃあ、飲もっか。』

ジャラ、と軽く十数錠は越えているであろう薬の音がする。それはこっちも同じか。じゃあ、『「乾杯」』

どちらも話さない、静かな夜らしい時間が流れ、しばらく水を飲む音が互いに聞こえてくる。すると突然、

『ねぇ、電話つないだまま死の?』

と言われた。なんだ、そんなこと悩んでたのか。可愛いとこあるじゃん。

「当たり前でしょ。」

だんだん意識が消えていく。最後に聞いたのは、あの子のかすれた

『おやすみ、良い夢見ようね』

という言葉だった。

次に目を開けるとそこは綺麗な川の前だった。すぐ近くにあの子も倒れていたからさっさと起こす。

「起きろー」

「はっ。ここはどこ?私は誰?」

「ここだとまじてシャレにならんからやめてくれ。無事死ねたみたいだよ、だからさっさとあっち行こ?」

「えーなんでそんなすぐに嘘だってバレるかな?」

「お前が分かりやすいんだよ。ほら、行こ?」

「そだね!」

久しく感じていなかった過ごしやすい、ぽかぽかとした春のような気候。勉強にも課題にも追われない。人の顔色を伺い、びくびくしながら過ごす毎日からも解放された。

きっと、今日から最高の日が続くだろう。

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「 」 暗月 悠愁 @yusyu_ogomisama

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