鳥居鳥居鳥居

久しぶりに少し長い休みが取れたので、近くの海底都市ジベンエまで来ていた。たまには魚のように漂う休日も悪くないだろう。


さすがは海底都市といったもので、実に神秘的な光景だった。上を見上げると、陽光が海面に差していて、ゆらゆらと暖かに光っている。地上では見られないリングサージュも色鮮やかに咲き誇っていた。


ここに住んでいる人にとってはこれが変わり映えのない日常であるのだろうけれど、私にとってはどれも新鮮で面白い。


後、水中だから動きがとてもゆっくりになるし、ジャンプすると浮力でふわっと着地できたりもする。これを使って、地上では考えられないようなルートで移動する人も多々見かけた。


建物の上を歩っていたり、ペデストリアンデッキから飛び降りていたり。こんな自由な移動も海底都市ならではだ。


ホテルに荷物を預けたので、少し観光しようと思っていた。前々から耳にしていた廃墟水族館とか、アクアバンジーとか、行ってみたいものがいくつもあったが、まだ海に体が慣れていなくて、少し倦怠感があった。


だから今日のところは散歩程度にしておこうと思い、千鳥足でふらふらと彷徨っていた。この付近は、商業施設が立ち並んでいるだけで買い物くらいしかやることがない。それはそれで楽しそうだが、後日でいいかなと思った。


少しジベンエから離れた郊外の街並みも見てみたい。海底電車ボトルマリンに乗って移動することにした。ボトルマリンはよくSNSで見かけることが多いが、実際に乗ったことは無かった。少しのワクワク感を胸にメトロに向かった。


改札をくぐり、郊外に向かいそうなホームに適当に降りる。地下に向かう階段で、前の人がジャンプして階段を使わずにふわふわと降りていた。僕も真似をしてふわふわと降りてみる。


ホームで待っていたらあっという間にボトルマリンがきた。透明なボトルが連結して列車になっていて、そのボトルには足がついている。線路などはなく、道なき道を進んでいく。


開放的に外が見られるのだが、天然の水族館のようになっていた。多種多様の魚群の中をボトルマリンが駆け抜ける。ただの移動ではあるのだが、飽きることのない移動だった。


適当な駅で降りて、地図も持たずにトコトコと歩き回っていた。30分ぐらい海での散歩を堪能した頃だったか、遠くに高い塔みたいなものが建っているのが見えた。


それが妙に気になって、どうしても行ってみたいと思った。ただ、その塔らしきものは居住許可区域外だったので、危険であることは重々承知だったが、好奇心は止められなかった。


近づくにつれ、塔だと思っていたものが鳥居だったということがわかっていった。ただの鳥居ではなく、縦に同じ鳥居が積み重なって塔のようになっていたのだった。


こんな人里離れたところになんで神社があるんだろうなんて疑問もあったが、入ってみることにした。せっかくなので、ジャンプして下から3番目の鳥居をくぐってみた。


その行為が目立ちすぎたのか、巨大魚が私の背後からやってきて、私の背中に強い衝撃を与えた。


私はその力になす術もなくやられて、海に伏せるヒトデのように、神社の冷たい床に横たわった。



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