第4話 進行していく話

連れてこられたのは港の倉庫外。だと【勘による分析力】デリュージョンが告げている。まあそうでなくとも大体は予想が付く。


インテリヤクザと名乗った人物は高級車からハヴィングを連れ出すと「一つだけ忠告してあげる、怒らせない事だ」と言った。


倉庫の中へ入ると目隠しを外される。


パッパッと光に照らされる。


「君の名は?」


三葉と、答えようとしてそのネタが通じる相手だと思えない。


「本野読」


「そうか、君がやっつけた不良たちを覚えているか?」


「生憎、物覚えが悪く」


「まあ良い、君はそこそこ腕が立つ。そこで相談だ。私の娘は予知能力を持った界隈では有名な娘でね、遊び相手になってやくれないか?」


(なるほど、能力者との接点作りか)


『トゥボローオーソリティの依頼を受けますか? YES/NO』


「アナタの名前は?」


「受けるなら名乗ろう」


YESを選択。


「私の名は傀儡創世」


「娘は不破景都」


金髪に染め上げた髪を纏め上げた女性が前に出る。


「よろしく、ボディーガードさん」




ーーーー


なんと言えば良いかとかマイルームの扉の取手に手を掛け開く。


フォークが首筋に当てられ、ヒヤリとした汗が背中に流れる。


フォークが下され、


「仕返し、でどこ行ってた?」


「なんて説明すれば良いのかなあ」


コンビニで出会ったインテリヤクザのファミン・ハンガーの伝手でシャロウと近い能力を持った予知能力者のヤクザの娘のボディーガード遊び相手の話をする。



「なんかお前だけストーリー進行が早いような気がする」

「女だからでしょ」

「でもなあ」

「女装でもしたら?」

「それはお前の好みだろ」

「否定はしない」



「それよりアンタは何してたの?」

パソコンの付属品スキャン機能を使って手に入れたIDカードを試していたらしい。


「名前は、セオドア=ドアット=デビルス」

「研究役員らしいがそんな奴がスナイパーをやると思うか?」

「アンタの山への拘りは異常だわ」

「あの山には何かある」

「アンタの勘ロクデモナイ事ばっかだったのよね」

「とにかくもし本当に研究員だった場合、なんらかの薬もしくは肉体改造で強化された人間だとしか思えない」

「そこになんでハッカーが居てセオドアの名前を明かす理由は?」



コンコン


扉が二回ノックされる。


(最悪シャワー入りたかったのに)

(スナイパーライフルを取り出せ)


ガシャン


扉が強引に壊される。


巨大な機械の蜘蛛。


現実でも見た事がある【スパイダー】だった。


私たちは二階の窓から跳躍する。


【スパイダー】は無理矢理身体を入り込ませながら壁を破壊し侵入する。


「何体いやがるっ!」

「シャロウ!」


蜘蛛の群れ。

「引っ越さなきゃな! その前にゲームオーバーにならない事を祈るばかりだ!」

「撹乱しながら倒しましょう」

ハヴィングが【スパイダー】の下に潜り込む。

それを別の【スパイダー】が【スパイダー】ごと前脚で頭部を突き破る。


シャロウが【スパイダー】の上に降り立つ。

それを別の【スパイダー】が前脚で頭部を突き破る。シャロウは宙で回っている。


「能力は使うなハヴィング!」


ハヴィングは舌打ちする。


二人は【スパイダー】の網を掻い潜りながら同士討ちをさせる。


最後に残った黒い【スパイダー】一体。


「アレには搭乗者が乗っている生け取りにするぞ」


「OK」


二人が居た場所に前脚が高速で地面を突き破る。


ハヴィングは下に潜り、シャロウは頭部に降り立つ。


ハヴィングは【伸縮自在の見えない鞭】アタッチメントを死角から使った。


左手人差し指が女性の指から怪人の指に変わる。

その指から放たれる高周波ブレード。 


それは戦車すら両断する威力で気付いたシャロウがキレ気味に避ける。


「見られなきゃ良いんでしょ! 用は!」


「生け取りっつたろ!」


(だがコレで黒だと確定した、軍事機密の戦闘兵器【スパイダー】それがゲームに転用されている)


両断された機体の中に片脚を切断された兵士、セオドア=ドアット=デビルスが乗っていた。


(大方後始末の捨て駒にされたんだろう)


「意識はあるなセオドア」


セオドアは歪に笑うとーー口の中に仕込んであった毒で自害した。


「チッ、生きる見込みが無いとみりゃ死にやがった」

「でもコレで黒確定ね、軍事機密がゲームに転用されている」

「ああ、セーフティエリアに行き次第報告だ」




安っぽいモーテルに泊まり、身体を洗い流すと二人は一つのベッドで仰向けに眠った。



ーーーー


「んー! やっぱり現実が良いわね」

「それより報告が先だ」


二人は報告を済ますと返事を待った。


『やはりか、報告ご苦労』


「え? それだけ? 本社を取り押さえなくて良いんですか?」


『すでにゲームは自律し本社はもぬけの殻だ』


『誰がなんの目的でゲームを稼働させているか、それは我々が調べる。引き続きVRゲーム〈リアルエクスペリエンス〉が何処まで知っているか調査を頼むーーーブツッ』


「はあ? 嘘でしょ、まだ続けるの? あのイかれたゲーム」


「とりあえず学校行くぞ」



ーーーー


アウトライン國の学園。

レコールコード学園。


「本野さん、彼氏と登校?」

そんな冷やかしを軽くあしらい、

「うん、そんなとこ」


(良く言うよ、誤解されたくないだの散々言ってた奴が)



「だってよ涼宮! お熱いぜ」

「やめろ、武藤。お前こそお家は良いのかよ」


武藤財閥。

武藤重治は武藤家の御曹司であり本人はと言うと自覚はあんまり無いように見える。


今し方冷やかしをした影原亞里亞は武藤重治のボディーガードである。


「亞里亞ちゃんが嫁に来てくれたらなあ」

「冗談良してよお家安泰のために頑張りなさい、そのために私がアンタを守るんだからね」


ハヴィングとシャロウは横目で見つめ合い(なんだか関係性が似ている)と互いに思った。






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〈リアルエクスペリエンス〉 与都 悠餡 @Kumono01

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