最強赤ずきん

とうふとねぎの味噌汁

第1話

昔、小さな可愛い女の子がいました。みんな女の子を可愛がっていましたが、おばあさんが特に溺愛していました。おばあさんはお裁縫が得意だったので、上等な赤い布で頭巾を作って女の子にあげました。女の子は、その頭巾をとても気に入ったので毎日かぶっていました。そして、赤ずきんちゃんと呼ばれるようになりました。


ある日、お母さんが赤ずきんに言いました。


「病気のおばあさんに、ワインとケーキを持っておいき。寄り道してはいけないよ」


「わかったわ」


と赤ずきんは言って、指切りをしました。


おばあさんは村から1.5Km離れた森に住んでいます。赤ずきんはおばあさんが元気になるようにと思いながら、早歩きで行きました。赤ずきんが森に入った時、狼に会いました。赤ずきんは狼を全く怖がりませんでした。


「こんにちは、赤ずきんちゃん」


「こんにちは、狼さん」


「そんなに急いで、どこに行くんだい」


「おばあさんのところよ」


「エプロンには何が入っているの」


「ケーキとワインよ。すぐ食べられるようにナイフとフォークも持ってきたの。病気のおばあさんにおいしいものを食べてもらって丈夫になってもらうのよ」


「赤ずきんちゃん、おばあさんはどこに住んでいるの」


「森をあとたっぷり700メートルいったところ。おばあさんのお家は3本の大きな樫の木の下にあるの。はしばみの木がすぐ下にあるから、きっとわかるわ」


と赤ずきんは答えました。


狼は、なんて柔らかそうで若いんだ。ばあさんよりうまそうだ。おばあさんと赤ずきん、両方食べてしまおうと心の中で考えました。それで狼はしばらく赤ずきんのそばを歩いて、それから言いました。


「赤ずきんちゃん、見てごらん、このあたりの花はなんてきれいなんだろうね。この花を摘んで、おばあさんへの土産にして持っていったらおばあさんも喜ぶだろうね」


赤ずきんはあたりを見回しました。


太陽の光が木の間からひらりと踊っていて、きれいな草や花が一面に生えていました。赤ずきんは「おばあさんに摘んだばかりの花束を持って行けば、きっと喜んでくれる」と考えました。そして草花をさがしに道から森の中へ走って行きました。一本摘むと、もっと向こうにもっと素敵な草花があるように見えてそのあとを追いかけ、だんだん森の奥へ入って行きました。


その間に狼はまっすぐおばあさんの家へ走って行き、戸をたたきました。けれども、返事がありません。


「おばあさん? 赤ずきんよ。入れてちょうだい。ワインとケーキを持ってきたの」


と狼は呼びかけますが、返事がありません。


戸を回してみると、鍵がかかっていませんでした。


「おばあさんは少し元気になって、外の空気でも吸ってこようと思ったのかもしれない。それならもうすぐ赤ずきんが来るはずだから、お婆さんのふりをして待っていよう」と狼は考えました。それからおばあさんの服を着て、帽子を被り、ベットに寝てカーテンをひきました。




あかずきんは草花を摘んで走り回っていました。たくさん集めてもう持てなくなると、おばあさんの家へ続く道を進みました。赤ずきんは家の戸が開いたままになっているのに驚き、


「怪しい。嫌な予感がする」と思い、


「お早うございます!」


と叫びましたが返事がありませんでした。それで赤ずきんはベッドに行き、カーテンを開けました。そこに顔まで深々と帽子をかぶったおばあさんがいて、とても奇妙に見えました。


「まあ、おばあさん、とても耳が大きいわ」


「お前の声がよく聞こえるようにだよ」


「だけど、おばあさん、とても目が大きいわ」


「お前がよく見えるようにだよ」


「だけど、おばあさん、とても手が大きいわ」


「お前をよく抱けるようにだよ」


「だけど、おばあさん、おそろしく大きな口よ」


「お前をよく食えるようにだよ」


狼はこう言うか言わないうちに一跳びでベッドから出ると赤頭巾を飲み込こもうとしました。


ガリッ


「!?」


狼の口の中にフォークがツッパリのように縦に入っていました。狼は少し後退し、口に挟まっているフォークを捨てました。完璧だと思っていた奇襲が失敗し、驚きでいっぱいの顔でした。


狼の口に挟まっていたフォークは咄嗟に赤ずきんが投げたものでした。


「おかしいと思ったのよ。おばあさんはいつもすぐに返事をしてくれるのに、返事がないし。あと、いつも焼き菓子の匂いで満たされているのに、こんなにケモノ臭いわけないじゃない」


「ちっ。バレてしまったなら仕方がない。美味しそうなお前を食べさせておくれ」


狼は赤ずきんに襲い掛かりました。


「嫌よ、諦めてちょうだい」


狼は赤ずきんの頭を狙って、鋭い爪で引っ掻こうとしました。赤ずきんは襲い掛かってきた狼を屈んでよけ、足を引っ掛けて転ばせました。狼はすぐさま体制を整えようとしましたが、その隙を赤ずきんが見逃すはずがありません。赤ずきんは立とうとしている狼の頭を、持っていたワインで殴りました。


パリン!


「痛ってえ……」


狼は床に蹲りました。赤ずきんは割れたワインの瓶で狼にとどめを刺しました。


グサッ


狼のたくさんの血が、赤ずきんに降り掛かりましたが、赤ずきんは気にしていませんでした。


「終わったわ……。いつもの武器ではないから、またしばらくしたら復活するでしょうけど。その前に、おばあさんを探さなくては」


赤ずきんはおばあさんを探しに、森へ出ました。


「おばあさん。どこかしら……」

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