第2話
意識が付いた彼女に手をさし伸ばす。
「大丈夫ですか?」
彼女は周りを見渡し、緑僧をみるとゆっくりとさし伸ばした手に触れた。
彼女が緑藻の手に触れた瞬間に、一気に彼女の顔が青ざめていった。
――どうしたというのだろうか?
疑問に思い心配に装い聞いてみる。
「どうしましたか? 大丈夫ですか?」
彼女に優しく話しかける。あくまで、腹の内は見抜かれないように、猫を被るのだ。
すると、恐る恐るといったように彼女は口を開く。
「だ、大丈夫…です」
か細く震える声だ。何かに怖がっている。
緑僧に、――私に怖がっている?
あの時、【
だが、そんなはずはない。あの時、あの場所にいたすべての人を確認し、顔、視点の位置をみたがこちらを認識している人は一人もいなかった。
怖がる要素は一つもないはず、それなのに怖がっている。
誤解か、緑僧が気づかなかっただけで見られていたか、そういう能力か。
わからないが、後ろの二つの可能性は低いといえるだろう。
だが、前者ならば解けばいい話だ。可能性的には誤解の可能性が高いから距離をゆっくりでいい、縮めていけばいい。周りには誰もいな。大事な情報源だ。
さし伸ばした手を引き、彼女を立たせる。
「あの、ここはどこなんでしょうか」
「ここは、地獄です。罪を犯した者が入れられると聞いています」
――やはりか、彼女の話から確信が得られた。だが、まだ完全に確信するのに至らない。
彼女は「聞いています」といった。彼女も誰かに聞いたのだろう。
――誰かに聞いたのか。
定かではないが今は考えている間ではないだろう。不審な行動に見え、怪しまれてしまう。質問に答えてくれなくなってしまうかもしれない。
最後の質問をする。
「あなたは、なぜここにいるのですか?」
彼女は少し押し黙ると、ゆっくりと口を開いていった。
「わ、私は人を殺めここに落とされました。このエリアは、『三階』人殺しをしたものが落とされる場所です」
「あなたが、殺人を……」
人は見た目によらないとはこのことだ。彼女はお淑やかで大人しい優しそうな女性だ。だが人を何人かは分からないが殺している。――だが、貴重な情報を得れたことに変わりはない。
――生かすべきか、殺すべきか。信号は青、殺さなくてもよい。
本能ではそう言っている。だが、彼女はおかしなことがある。
さっきの仮定では、死んだ者は生き返るとした。だが、考えればおかしなことがある。一緒に殺した奴の蘇生が行われないことだ。さっきまでは遅いだけだと思っていた。だが不自然に遅すぎる。彼女しか蘇生されていない。
信号は青。だが今ここで殺すべきだと脳で判断している。
彼女に背を向け、歩き出す。
「あ、あの……」
――能力発動。【
彼女を、全てを包み込むように【
――そういえば、上着をかけたままだった。まぁ、問題ないだろう。
「それはプレゼントだ。差し上げよう」
顔だけを後ろに向け、吸い込まれ既にいない空に話しかける。
そのまま顔を戻し前に進んでいく。
とりあえずは、まわりを探索することからしなくてはならないだろう。
結局【
新たな人を探す、それが最初の目標だろう。
彼女以外の話も聞いておきたい。
周りを見渡してから、緑僧は当てもなく地獄を歩いて行った。
獄落蘇生 一条 楓士 @itijo_soji15
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