第6話 英雄の証
「どれすあっぷ♡ ラッキーラビット!!!」
ウサギが白い鎧へと変身して、それを装備するルナ。
ゴブリン二体の攻撃を腕を交差させて受け止める。
ドレスアーマーそれは神が創りし女性のみが着れる最強の鎧。
まさか、あのウサギがドレスアーマーだったとは思いもしなかった。
「たたかう! まけない! お兄様の為にルナは闘う!」
いくらドレスアーマーを装備したからといっても、ルナは戦えるのか?
これまで戦闘経験は無く、最近やっと歩けるようになったばかりだぞ。
ゴブリンの強さは成人した一般の男性で勝てるかどうかのギリギリらしい。
それを二体相手にするとなると……
「「ゴブ」」
二体同時に再度ルナに襲いかかる。
「体術……ムーンウォーク!」
なっ、ルナが分身した。
二人になり、それぞれのゴブリンに蹴りをお見舞いする。
「「ゴブっ!?」」
相当なダメージを与えたみたいだ。
腹を抑えながら、もがき苦しむゴブリン……ポンっと煙になり、跡にはビー玉みたいな物が残った。
「お兄様〜やりました!」
戦闘が終わり、分身が消える。
俺の心配は杞憂に終わった。
初の戦闘で、よくここまで出来たものだ。
ホントに、本当によくやってくれた。
「よく頑張ったな! 偉いぞルナ」
「えへへ……お兄様の為にがんばりました。」
変身を解いて、小さくなったドレスアーマーを、買ったばかりのマジックポーチの中にしまう。
念の為にゴブリンを倒して出てきたビー玉を回収しておく……後で何かの役に立つかもしれない。
それと、ウサギを宿に持ち込む件だが、鎧になったので、一応解決したという事にして帰ろう。
◆◆◆
次の日……俺はある人を尋ねて別の宿へと、やって来た。
今日会いに来たのはシンラさんの友人で、俺がこの世界に来た時に初めて出会った人。
困った事があれば、何時でも会いに来ていいと、言われたのを思い出し……昨日のドレスアーマーの事を聞きに来た。
宿の二階へと上がり、一番奥の部屋をノックする。
「どうぞ……開いてるから入ってくれ」
「クラリスさん失礼します!」
「しつれいします!」
了解を得て、ドアを開けて部屋の中へと入る。
初めて会う人で恥ずかしいのかルナは俺の背中に隠れている。
長い銀髪の女性クラリスさんが机の椅子に座っている。
机の上には書類が置いてあり、仕事をしていたみたいだ。
「久しぶりだなジュン。 元気にしていたか?」
「はい、お陰様で! 今日は質問があってきました……あっ、そうだ。 その前にルナもクラリスさんに挨拶するんだ。」
俺の背中に張り付いたまま顔だけを出して挨拶する。
「は、はじぇみませて……あっ、かんじゃった!?」
「なっ!? なぜ……姫が?」
挨拶で噛んでしまったルナを驚いた表情で見るクラリスさん。
姫?……ああ、
よくご存知で……さすがクラリスさんだ、何でも知ってるな。
「そうなんですよ! ルナは町でけっこう有名で」
「あ、いや、違う。 姫のはずがない……」
「ええ〜ん、かんじゃった、ルナはダメな子」
ちょっと失敗すると、すぐ落ち込む体質のルナ。
ネガティブモード全開だ。
「ば、馬鹿な!? 少しの事で落ち込むだと……やはり姫なのか?」
クラリスさんの様子が変だ。
いつも冷静で落ち着いていて、どんな敵が相手でも動じない、鋼の意志の持ち主が……ルナを見て慌ててる。
「あのークラリスさん、今日は質問があって」
「あ、ああ、そうだったな。 私とした事が……失礼した」
何かを振り払うかのように頭を振る。
落ち着きを取り戻したクラリスさんに椅子に座るように促される。
「失礼します」
「しつれいします。 しょぼん」
相変わらずネガティブモードのルナを放置して、話を始める。
草原地帯であった事……ルナに懐いたウサギがドレスアーマーに成って守ってくれた。
それとゴブリンの残したビー玉の正体。
「まずドレスアーマーだが、神が創造した鎧だ。 そこには意志が宿る。 動物の姿で現れる時も有れば、魔物になる奴もいる。 重要なのは……」
重要なのは人が選ぶのではなく、ドレスアーマーが装備する人を選ぶようだ。
クラリスさんはさらに詳しく教えてくれる……
ドレスアーマーには技があり、体術、魔術、秘術、奥義の四つを駆使して戦うのだと。
さらに鎧としての特性やステータスも有るのだとか……
「特性はその鎧による。 知りたいなら、そのドレスアーマーを触れた状態でステータスと言えばいい」
ルナにポーチから装備を出してもらい、手を当ててステータスと呟く。
【ラッキーラビット】 総合評価Cランク
『特性』 高く跳べる。 スピード上昇
『体術』C ムーンウォーク
『魔術』E ラビットハンマー
『秘術』C ラッキールーレット
『奥義』B ラッキームーンソルト
クラリスさんにもステータスを見てもらい解説してもらう。
総合評価Cランク……装備の評価で、E~SSSまでの八段階。
『体術』……本人の『綺麗』と『格好良い』に比例して強くなる技。
『魔術』……本人の『可愛さ』に比例して強くなる技。
『秘術』……本人の『セクシー』に比例して強くなる技。
『奥義』……本人の全体のステータスと、ドレスアーマーのステータスを合わせた技。
アルファベットは強さを示す表記。
ラッキーラビットは『体術』と『秘術』に優れている為、『綺麗』、『格好良い』、『セクシー』が関わってくる。
だが、ルナのステータスで優れているのは、『可愛さ』と『セクシー』の二つ……『綺麗』と『格好良い』はやたら低い値だ。
ラッキーラビットの鎧とルナで噛み合っているのは、『セクシー』だけとなる。
なるべくなら、自分のステータスに合うドレスアーマーを見つけた方が良いみたいだが、そう上手く見つかる物ではないらしい。
「後は魔石の事だな……」
ゴブリンを倒した後に出てきたビー玉、アレが魔石らしい。
魔石はドレスアーマー修復の際や、アイテムを作るのに必要になるみたいだ。
「もし魔石が必要無いのなら、冒険者ギルドで売っ払って金に替えてもいい」
「クラリスさんって、もしかして冒険者ですか?」
「いいや、私は冒険者ではないな。 ただの流浪人だ。 もし冒険者になりたいのならギルドで私の名前を出すといい! 悪いようにはならないから……」
ただの流浪人?
俺がこの世界に来た当初、ドラゴンに襲われて死にそうな所にクラリスさんが現れて、ドレスアーマーも使わずに剣だけでドラゴンを退治してしまった。
そんな人がただの流浪人?
怪しすぎる!
「シンラさんも、そうですが、クラリスさん達は何者なんですか?」
俺は率直な疑問をぶつける。
だっておかしい、やたら強いし、権力はあるし。
もしかしたら貴族か何かだろうか……
「すまない! それについては話せない。 秘密とは甘い罠だ。 もし君が知ってしまったら、後には引けなくなる。。。」
「うぅ!?」
突如クラリスさんから放たれる殺気。
鋭い眼差しで俺を見ている……喉元に剣を突き付けられているかのようだ。
まるで百戦錬磨の騎士にでも睨み付けられているのか、身体がピクリとも動かない。
「ははは、冗談だ。 ちょっと脅かしてみただけさ。」
「ああ、よかった。 ごめんなさい変な事聞いて」
「私も女性だから、秘密を話すのが恥ずかしいだけさ」
「そうですよね。 いや、失礼しました。」
クラリスさんに失礼を詫びる。
その後は何事も無かったかのように、優しく接してくれて、会話を進めていた。
「キメました! ルナ、冒険者になる!」
異世界 綺麗と可愛い、どちらが強いのか? ぺったんこ @vivir
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