散々バカにされた大会の主催者の息子さんと出会って恋をする!!

@kaminetu

第1話

 静岡生は、目の前の男をじわじわと睨め付ける。だが、ガタイのいいその男はまるで気にするそぶりは見せずに、むしろにやにやと笑いで余裕たっぷりだ。

 

「ルールは、説明したとおりだ。――彼を取り戻したければプロ棋士で有名な君が私達を勝てばいい。そのためにはボスである俺の部屋まで来い。期待して待っているぞ。ヒャハッははワアッハハ」

「要は、将棋で勝てばいい。シンプル。欲しいものは全部将棋に勝って手に入れたい私を舐めないでちょうだい」

「そうだ。だが、名人に行くのは至難の業だぞ。正ちゃんと一人ではないとは言え、何日かかるかはわからない。神のみぞ知る。さらに部屋は全部無料で提供するが、実力が落ちたら降格だって考えられる。部屋すら与えられない。寝るのだって外だ。雨が振ったとしても部屋にはいられない。私に見せてくれ?女性最強の君主と言われた実力でな」

 

 興味津々と顔と下卑た微笑みが見え隠れする。それでも生はゆっくり呼吸を整えて

 

「今の私は誰でも勝てる」

「結構。良い覚悟だ。将棋の昇格や降格する時は前日に知らせるああ、それと――」

「……!対価はしっかりする。私の体に触れられるのを喜ぶがいい。」


 遠慮なく男は生の胸に触れる。ゆっくりじわじわと優しさがなくなって強くなっていく。生は胸を触るボスの手をほりほどきはらった。


「離せ。もういいだろう」

 

 この男には、参加料という形で「対価」を要求されたのだ。それでも生は心の中で眠る実力を引き出して、(実力をバカにするこいつらには負けない)と思いを将棋の駒として戦う決断をした。その時ボスの手がお尻に触れた。

 

「っふ、ぅ――」

 

 僅かながらでも、生を喘がせた。

 

「ほぉ君主と言われた君が色っぽい声を出せるなんてね。将棋をやらすのは勿体無い。配信とかやらせて一儲けをしたいところだね。いやそれはいい。そうしよう。どうせ君の負ける姿を見たがっている観客は多い。是非負けた姿を見てもらおう」

「……ッ負けない。貴方みたいな人に私が負けるはずがない」

 

 抵抗の声を、あげた。諦めないそれが生の武器。何をされても、何を言われても言い返す。そう彼女は誓ったのだ。きっと他のライバルたちも同じ想いだろ。そのライバルたちと戦うためにも如何わしいこの闇のトーナメントで勝ち続けるが必要で。ライバルたちの状況を知ることはできない。だが、私は負けない。勝って勝ち続けて将棋界の最強の君主になる夢に近づく。

 

「そろそろ時間だな」

「んっ」

 

 最後にキスをされて抵抗するも、野蛮なボスのイタズラに手を焼いている。

 

「精々頑張ると良い」

「……ふん」

 

 生はこの男から勝てる女性と言わせる。私が弱いとは言わせない。

 

「フアッハハっハハ」

 

 男は弱いというかのように笑みを浮かべながら、彼女を呼び止めた。

 

「必ずお前を俺様の前で弱くてごめんなさいって言わせてやる。自信丸ごと飲み込んでやるわ」

「私があんたに? いうわけない、そんな話。名人になって優勝してお金をもらう」

「さて、できるかな?」

 

 それ以上生は相手にせず、だだっ広い部屋を出て行った。ボスは下卑た視線を隠さないまま、彼女を見送る。彼女をバカにする言葉を言い続けた。そして

 

「トーナメントの始まりだ。この中でトーナメント参加出来る騎士はいるかな。ヒャハッはは」

 

 男はそのまま、別室の部下に連絡を取る。

 

「俺様だ。名人戦のタイトルを持っている葛木さんに電話しろ。時は来たとな」



 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

散々バカにされた大会の主催者の息子さんと出会って恋をする!! @kaminetu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ