第77話 新たなるマスター

「いきなり明るくなったぞ!?」

「らっ、乱道様!! 中に入ってますよ!?」

「へっ!? あっ、そうだな」


 足元を見ると、門の中に一歩踏み入っている。それよりも、煌々と庭や屋敷が眩しいくらい明るくなったんで、そっちの方に驚いちまって……。


「そうだなって、そんな普通に! 誰も門の中に入れなかったんですよ! 分かってますか!?」

「うん、そうだよな。分かってるってば。キャロはちょっと落ち着け!」


 俺はキャロの頭にポンポンと軽く触れる。

 すると真っ赤な顔になって、急におとなしくなった。


「……むむう。すみません、興奮しすぎました」


 キャロが少し俯き、頬を染めて少し恥ずかしそうにしている。

 まぁ、今まで誰も入れなかったんだ。興奮するのも無理はない。


『らんどーちゃま! 広いでち、このお庭キラキラしてて気に入ったでち! かくれんぼし放題でち』

『うゆ! きにちゃ。きらきら』

「キャンキャン」


 俺を横切り我先にと庭に走って行った琥珀と稲荷と銀狼が、広い庭で楽しそうに追いかけっこをしている。

 

 ……お前ら楽しそうだな。


 それにしても不思議な屋敷だな。この庭園の地面も少し輝いているし、至る所に照明があるみたいで、何だかこの屋敷の場所だけ昼みたいだ。


『乱道様、我々も中に入りましょう』


 楽しそうに遊ぶ琥珀たちをぼーっとみていたら、我路がそっと手を背中に置いて誘導する。


「お、おお。そうだな」


 相変わらずのイケオジだな。


「隠されていた謎の大賢者様のお屋敷の秘密が明らかになるんですね! ドキドキしちゃいます」


 キャロも楽しみなのか、長い耳が揺れている。


 俺たちは少し緊張しながらも、丁寧に手入れされた庭園を歩いて行く。


「なんで誰も入れないはずの屋敷の庭に、こんな綺麗な花が咲いてるんだ? ゴミどころか枯れた葉さえ落ちてねぇ。普通なら幽霊屋敷みたいな雰囲気になるはずなのにな」

「ええ、花が生き生きしていますよね。毎日庭の手入れをしないとこうはなりません」


 不思議な庭だなとキョロキョロしながら歩いていたら、いつの間にか屋敷の扉の前に立っていた。


「扉の鍵はここにあるんです! では開けますね」


 キャロがダイヤの形をした魔道具を扉にかざす。





 ………………………。





 開いたのか? なんの音もしなかったが……?



「んん? 開いたのかな?」


 キャロが恐る恐る扉に手を掛けるも、びくとも開かない。


「あれ? 開いてない? どーして!? なんで!??」


 キャロはパニックになりながらも、扉に何度も魔道具をかざす。


 だが扉はうんともすんとも反応が全くない。


「まあ、キャロ落ち着けって…………っと!?」


 キャロを落ち着かせようと、肩を掴んだ時に俺の指先が扉に触れた……次の瞬間。


 キィンっとした音と、何かの波動が俺の指先に流れ込んでくるような感覚がしたなと思ったら。


 扉がガチャリと開いた。


 そして三人のメイド? が頭を下げ「「「おかえりなさいませ。新たなるマスター。あなた様をお待ちしておりました」」」


 と俺に向かって言った。


 新たなるマスター? 俺が?




 

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異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので、白虎や幼狐ついでにイケオジ執事とスローライフを楽しみたい〜 大福金@書籍発売中 @kinryu88

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