第76話 謎の屋敷

「どうですか乱道様? 素晴らしいお屋敷でしょう」

「……いやな? 確かに素晴らしい屋敷だとは思うぜ? だけどさすがに大きすぎないか?」

「何を言ってるんですか、乱道様が宿泊するんですよ! これくらい広いお屋敷でないと!」


 キャロはフンスっと鼻息荒く、褒めてくれと言わんばかりに長い耳をぴこぴこと揺らせる。


 その気持ちは嬉しいんだが、さすがに広すぎだ。


 宿泊費だって一泊いくらするんだか。きっと恐ろしい値段に違いねぇ。

 獣人国にいる間は、どうせなら同じ宿屋で泊まっていたいしな。

 こんな所に何日も宿泊できるわけがねーだろ。


「いい屋敷だとは思うが、ここで宿泊するのは恐ろしく高いだろ? だから違う所に……」

「乱道様なら大丈夫ただと思うのです! きっと入る事・・・ができるはずです。それにこのお屋敷は気に入られれば・・・・・・・宿泊費は無料です」


 は? 何を言ってるんだキャロ? 


 ———気に入られれば? こんな豪華な屋敷が無料で借りれる? そんなうまい話があるか?


 それにだ、一体誰気に入られたらなんだよ!


 俺が困惑していると我路が口を開く。


『キャロ様? いくら良いお屋敷だとしても、我が主に危害を加えるような屋敷であれば、私は排除いたしますよ? 無料ほど怖いものはありませんからね』


 我路が冷たくキャロに笑いかける。その顔は綺麗なんだが今にも刺されそう。

 キャロの顔色が一気に青ざめる。


「もちろん! 乱道様に危険な物件を紹介したりしません! これは訳ありというか……」

「……なんか理由がありそうだな?」

「はい。実は……」


 どうやらこのお屋敷の前の持ち主は、かつて大賢者とまで言われていた、凄い賢者が住んでいた屋敷なんだとか。

 その大賢者が死に屋敷が売りに出たんだが、誰も中に入る事ができない。

 入れないなら壊して更地にしようにも無理。

 そんな訳あり物件を誰も欲しがる訳もなく、最後には商業ギルドで管理する物件となったんだとか。


 そうなった後、キャロはこの物件の謎を解明すべく一人研究していたらしい。

 そこで分かったのが、魔力が関係しているのではないかと言うことだった。

 

「僕は乱道様の魔力なら間違いなく中に入れると思うんです! だからぜひ入ってみてください」


 キャロが期待に満ちた目で俺をみてくる。

 その気持ちは嬉しいが、多分無理だと思うぞ?


『さすがキャロ様! 見る目がありますね。我が主乱道様なら余裕でしょうね』


 我路がさらに追い討ちをかけるように俺を煽る。

 いやマジで……無理だと思うが? 

 屋敷に入るのは挑戦して見るがな? そんな期待した目で見ないでくれ!


 俺はゴクリと生唾を見込むと、右足を門に踏み入れた。


 ———次の瞬間。


 キィィィィィィィィィィンっと耳を劈く高音がしたかと思うと。

 

「おかえりなさいませマスター」


 っと、どこからともなく声が聞こえたかと思うと、真っ暗だった屋敷に煌々とあかりが灯った。


「何これ!?」

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