現実とゲームの境界
「戻ってきたんですね。しばらく来ないから心配していましたよ?」
と金髪碧眼の30代半ばはどの女性が答える。
そう、彼女こそ我らがギルドの団長にして"秀麗の最強剣士"と呼ばれている孤高の貴族階級出身の美人ゲーム廃人である。国籍はドイツ。十カ国語以上話せる天才にして日本語も堪能である。私は威厳に負けじと応答した。
「お久しぶりです。ご心配をかけて申し訳ございません。腕の方はご心配なく。ギルドの威信を傷つけることはないと誓えます。まぁそれも現実を忠実に再現しているゲームだからなんですがねぇ。こういう場所は武道家たちのナワバリですからクレームも来ますし。本当にありがたい限りです。」
やりとりをしているうちに皆が集まってきた。
我らがギルドの団員たちである。
「集会を始めますよ。刮目せよ。」
俺が代表としていつも集会を開いている。
これも父親の威信のおかげなのだが、あまり認めたくはない事実である。
「我々は、この世界-ゲーム-に於ける地位は首位で安定しイベントでも負けを知らない最強ギルドの人間である。そして、これを簡略化することにも成功した。それに関しては感謝の意を申し上げたいと思う。だが、まだ終わってなどいない。いや、始まったばかりであるとあるだろう。何故ならば現実に対する影響力が弱いからである。団長の名と威信にかけて必ずや現実世界に於ける"首位"の座を手に入れて見せようではないか。まず、手始めに日本の東京を拠点に我がギルド"Aegis"を設立する。団員たちには会費を賄ってもらう。一等地に豪華な屋敷を建てる算段はついている。そして、大々的に民衆へPRする。バハムート・オンライン運営からスポンサーの申し出もあった。以上。」
団員たちが騒つく。ついにきたかと言ったような声が各人の母国語で聞こえてくる。そう、実は俺は現役の神童で数か国語を話せるのだ。団長が微笑む。
時を同じくして、首相官邸にて「一條閣下、大変です。」「どうした。共産主義連盟か?」「その通りです。北海道の領有権を主張していたのがついに侵攻を始めました。」「在日米軍はどうした。」「在日米軍と連邦軍は既に宣戦布告しております。」「分かった。宣戦布告演説をする。」
こうして新たな時代の幕がきっておとされたのだった。
バハムート・オンライン 大谷忠正 @koukiitinose
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バハムート・オンラインの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます