幻想の季節 短歌二十首連作部門

滝口アルファ

幻想の季節

月紅き夜を飛びゆく鳳凰の傷より蒼き血がしたたって


復讐は正義のようにかがやいて朱雀が啄む玄武の魂


カラオケで百点連発する君は迦陵頻伽の転生だろう


地獄より遥かに暗い洞穴で咬み付き合っているケルベロス


AIのわたしを制御できるって信じてるのよヒトって馬鹿ね


逃げてきた銀のパラレルワールドの金のケンタウロスのウインク


平然としているけれどサイダーのように孤独が泡立っている


雲の峰 例えば君は憂鬱の蒼い炎に包まれたのか


君のほほえみの残像 雛罌粟のように明るい雨の残像


わたくしの中のきりぎしに立っているわたくしに突き落とされるユダ


月の夜に現れた銀のユニコーン「この角をへし折ってください」


行く場所も帰る場所もないペガサスの不安が降らすこの天気雨


人類はしばらくカキツバタになれ 虹の予感の強くなる空


悲しみの金の鱗粉まみれなるクレオパトラの銀のくちづけ


死神と死神愛し合ったって光が闇を吹き払うでしょ


死にそうで死なないままで死にそうで 刺繍のような白い花脈だ


わたくしを呼ぶ声がして振り向けばアクアマリンの蝶舞い上がる


落ちている白骨化している小鳥めいた洗濯バサミが一つ


こんなにも青空だからメドゥーサよ石にしてくれ例えばPを


幻想の季節も巡るのだろうか 昼寝している満腹の獏

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