第5話
惑星754WPR66行きのロケットは数便、明日の深夜に出発する。
エージェントは先に行きエアポートで待ち合わせをした。サエキは仕事を辞めて荷物を纏めると上司に辞表を出した。
『世の中物騒だからな。』
上司はそう言っただけで特には事情も聞かなかった。夜遅くにやっと荷物を持ちエアポートに向かう。自動運転タクシーでエアポートに到着すると、惑星754WPR66行きの人が溢れていた。
荷物を預けて手続きを終わらせる。カウンターを離れると鞄の中で端末にメッセージが届いた。
『今何処?』エージェントが探しているとメッセージを送ってきた。
サエキは周りを見渡すと搭乗口への扉の前にエージェントを見つけた。
エージェントに駆け寄りサエキが微笑むと、彼は少しサングラスをずらして微笑んだ。
『マスクは?』
『つけてたら君が僕を探せない。』
『でも危ない・・・ねえ、エージェント?』
サエキが視線を上げてエージェントを見た時、彼の額から血が溢れた。穴がぽつんと開いてサエキに倒れこむ。
サエキの肩が赤で滲んでいく。
『あああ・・・。』
エージェントは薄目を開けたままで動かない。瞳孔が開いているのが分かった。
サエキたちの様子に気付いた人が悲鳴を上げる。それに驚いたのかエージェントを撃ったであろう人影から銃が落ちた。
ざわめく人ごみの中でサエキはエージェントを寝かせるとゆっくりと立ち上がり、エージェントを狙ったであろう銃を拾う。まだ熱いそれに触れると両手で構えた。
震える瞳でサエキを見ているのは子供だった。
『おもちゃだと・・・聞いてたんだ。』
震える声で子供は言う。サエキの耳には届いていたが涙で視界が揺れていた。
そしてゆっくりと引き金を引いた。
真っ白い部屋。右側にはマジックミラーが貼られている。
目の前の大男は先ほどから私の顔を覗きこんでは睨みつけ、筋張った拳で何度も何度も机を叩いている。
『あんたは子供を撃ち殺した。違うか?』
繰り返される言葉の意味を私は理解している。
それでも首を縦に振ることはない。
サエキはただ目を閉じる。
目の前には震える瞳の子供がサエキを見つめている。
『おもちゃだと・・・聞いてたんだ。』
手の中の純情 蒼開襟 @aoisyatuD
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