3日目 元気で行こう、遅刻するな
前回の渡英旅行で大英博物館に行きそびれたので今回は逃すまいと思ってたのだが、旅というのはトラブル&予想外の出来事&リサーチ不足によるオーマイガーがつきものなわけで。
大英博物館、来場者が多すぎて入場無料なのにネットで事前予約が必須になっている。そして事前予約していても入口に長蛇の列ができている。ようやく着いたと思ったら手荷物チェックもある。USJのジェットコースターみたいだ。
色々見たいものはあったのだが、偶然、ほんとに偶然、ミケランジェロ展みたいなのをやってると現地に着いてから知ってこーれーは、と思ってしまった。しかもちょうどJAPAN展あるよって看板出てる時に。もはや縁としか思えない。侍の甲冑とミケランジェロの素描が並んでる看板は愉快すぎた。
それはともかく、大英博物館、ほんとに広くてでかい!!!!!!!!!!!!!!!
4階建てなので多分広さだけで言ったら甲子園3杯分はある(でまかせ)。それだけ桁違いの数の展示品が並んでいて、全部見て回るとなると絶対に6時間はかかる。だって3時間かけて半分ぐらいしか回れなかった。
大馬鹿者すぎる話だが、肝心のロゼッタストーンとかクリスタルスカルとかのハイパー目玉展示を見る前に閉館時間が来てしまったのだ。じ、時間調べてなかった。すごい軽い気持ちで昼1時とかに予約したけど、あれは中のカフェでお昼ご飯を食べること前提で、朝から夕方までかけて見学したほうがいい。甘かった。
それでもクレオパトラのミイラだとか、モアイ像のやつだとか、バベルの塔の欠片だとか、ミュロンの円盤投げのやつだとかは見れたので、うわー教科書で見たやつ!!ってもう大興奮で写真撮りまくってよかったっちゃよかったのだが、クリスタルスカルがどうしても見たかったインディ・ジョーンズ好きの僕である。
何よりミケランジェロ展見たかった。好きなものは後から食べる派なのが裏目に出た。いいもん明日ナショナルギャラリーまで絵も見に行くから……。
どこかの部屋が丸ごと中国エリアだったのだが、彫刻から美術品まで色々展示してある他と違って全部、なぜか食器ばかりだった。なんで?何か理由があるんだろうか。日本や韓国のコーナーは他と変わらないのに。にしても中国コーナー、ほぼ中国人の人しかいなかったな。まあ異国の博物館に自分の国のものがあると見たくなるよね。自分もそうだし。
お客さんは本当に多かったし、しかも人種もごっちゃごちゃで、あちこちでそれぞれ全然違う言葉が聞こえてくる。どの国のお客さんも、みんな頑張って英語で職員さんに場所を聞いたりしている。売ってたパンフレットは何ヶ国語も用意されていた。バベルの塔の欠片を見ながら、神様が作業員の言葉を乱したからこんなややこしいことにー、と神に文句ぶーぶーだった僕。ほんと、人類の言語がひとつだったらどんなに楽か……
JAPAN展は3階の独立したフロアを使って、浮世絵とか水墨画とかの美術品中心で展示していた。なんか、ミイラとか中世の武器とか古代ローマの彫刻とか見たあとだと、急に肌なじみのいいものが出てきたなぁって感じでサクッと見てたわけですが。
侍のでかい甲冑やら刀やらが展示されてるところにすごい人だかりが出来てて、少年が目を輝かせながら飛びついてるのが微笑ましい。
そのJAPAN展のせいかお土産ものコーナーにやたらと浮世絵を使ったグッズが並んでいて、やれ富嶽三十六景ポストカードだの、富嶽三十六景キラキラ箔押し表紙のノートブックだの(しかもそれらが同じ箔押しキラキラのアリスやミュシャのノートと同じところに並んでるから面白すぎる)、富嶽三十六景ジグソーパズルだの、富嶽三十六景折り畳み傘だの(これはちょっと欲しかった)、波尽くしだった。ここロンドンですけど?それを手に持ってレジに並んでる人が多いから特集の効果がすごい。ちなみに館内カフェスペースで使われてるのも富嶽三十六景紙コップだった。
でもなぜか春画グッズも多かった。ガチで。春画の画集や春画ポストカードもあった。大英博物館のお土産コーナーに。ねぇ。春画の画集の隣にダ・ヴィンチの画集が並んでてさすがに愉快すぎて笑いながら写真を撮った。この画像は未来永劫ネタにしたいと思う。
そういえば日本の漫画をまとめた分厚い本も売ってた。表紙がゴールデンカムイで、いやここロンドンですけど?の2度目が出た。
セントポール大聖堂にも向かったのだけど(しかもその途上に金融街があって、お高級なビルとバリキャリワークマンたちがスタバのコーヒー片手に行き交うすごい街だった)、中に入るには20ポンドぐらいかかるらしい。大英博物館が無料なのがありがたすぎた。というかイギリス、博物館関係は寄付のみ経営で無料なところが多い。宗教施設の方が高くつくのだ。
かなりのでかさの大聖堂で、地元の小学生が社会見学に来てたり、もちろん観光客(含む僕)もいたりしてかなり賑わってたんだけど、その大聖堂をぐるっと囲むように異国情緒溢れる屋台がいくつも並んでEDMをズンズン流していたので意味不明すぎて笑ってしまった。
そこで買ったチリソースチキン的な何か(11ポンドもする。円安め)を食べながらベンチ(と言っても石でできた何かなのだけど大勢の人が座って異国めしを食べていたのでそれにならった)に座っていたら、アラブ系の兄ちゃんに話しかけられた。
「君日本人?俺めっちゃ日本アニメ好きだよ!」
いや軽すぎるわー。
「ドラゴンボールとかるろうに剣心とか!」
そしてチョイスが微妙に古い。それを指摘すると「BLEACHも好きだよ!」と。ごめんそれもちょっとなつかしめだわ。
僕は正直そこまでアニメや漫画をたくさん嗜まないし、海外で人気な作品だとせいぜい鬼滅の刃ぐらいしか読んだことがないので、こうやってアニメオタクの人に絡まれるとあまりノリのいい受け答えができなくて「まあ、漫画詳しくない日本人がいてもいいと思う……」みたいな微妙な返事をされたことがある。ああ、思い出してもなんか申し訳ない。
一方的にまくしたてられるのをあーハイハイと流していたら、メアドやら何やらを聞かれて、やっぱりなーという感じ。日本人、性格的に断らないし押しに弱いし、軽いと思われるのだろう、過去に2回はこういうことがあった。しかもどれもアラブ系。なんだろう、シンプルに謎だ。
それにもひたすらノーサンキューと答え続けていると、サクッと「OK!バイバイ!」と笑顔で去っていったのでめんどくさくなくて良かったのだが、日本人はもっとノーをはっきり言う機会を作って練習した方がいいよなって思う。ちょっとだけ。
大英博物館の近くでたまたま見つけた、日本アニメが壁にも看板にも乱舞する、店内がアニメグッズだらけの愉快すぎる和食レストランだった。鬼滅の刃が好きだったのでするすると惹かれてしまい、そこでうどんをすする炭治郎のイラストの壁紙前でタピオカミルクティーを飲んだ。
メニューもワンピースやNARUTOやその他日本アニメをイメージしたものが多く、とりあえず何か軽く食べようと思ってハクが千尋に食べさせたおにぎりを注文した。これが普通に日本のお米っぽくて、わかめごはんになってて美味しかった。
アニソンが流れまくる店で、店員さんにありがとうございマースと日本語で挨拶されながら、タピオカミルクティーをぎゅいぎゅい飲む日本人の僕。元々海外のおもしろ和食を食べるのが好きだったけど、アニメを全面に出してるのは面白すぎた。しかもチェーン店だったし。
閑話休題。
大英博物館の前でもセントポール大聖堂の前でもそうだったけど、ご家族やご夫婦が頑張って手を伸ばしてセルフィー撮ってるところに「シャッター押しましょうか?」と言うとだいたい任せてくれる。そしてだいたい喜んでもらえる。
なんかちょっと嬉しいので積極的にシャッター押し押しマンをやっているのだが、これは明らかにお互い観光客だと分かるからできるのであって、本当は見知らぬ人からシャッター押しましょうか的な声かけがあったら注意しないといけないと思う。そのままiPhone盗られた的な話をたまに聞くから。
こっちからシャッター押してくれと誰かに頼む場合は、パッと見で観光客と分かる人じゃないといかんだろうな、という覚え書き。
閑話休題。
ロンドン地下鉄に乗ってると、ホームや通路のどこかですごい確率でホームレスを見かける。なんならウェストミンスター駅では地上に出てすぐの場所にテントを張っていた。男女問わず、パンを恵んでくれ的な文言をダンボールに書いて、床に座ってそれを声に出している。
そして観光客の多い路線では、電車の中で新聞か何かを売り歩いている人もいて、軒並みガン無視されていた。
先日の移民の話もそうだが、雇用問題やら何やらをこの国も少なからず抱えている延長なんだろうなと思った。路上生活者に至っては人種や性別に差がないからなおさらだ。細かい事情は分からないが、歩いているだけで分かる空気感みたいなのをこの国もまとっている。
そんなホームレスと車内売り子と路上生活者の多いウェストミンスター駅で降りたら、例のビッグベンがあるあたりに世界中の観光客が集まっていて、ただひたすらに写真を撮り、自撮りをし、自撮り棒を掲げていた。9年前に来た時はそこまで観光客が大挙して押し寄せていなかったので自由に写真を撮れたのだが、今回は他の観光客が映り込むのはもちろん、自分も人様の写真に映り込みまくりだ。
赤い電話ボックスに至っては恣意的なものなのかビッグベンの近くにやたらと置いてあって、そこにグループでぎゅっと詰めて入って写真を撮るのが流行ってるらしい。みんなやってた。確かに友達同士で来てたら絶対やってた……と思うからこうしてみんながインスタで見て真似して広まるのだろう。
ビッグベンの近くには小さいお土産スタンドがあって、先日書いたようにやれビッグベンや赤い電話ボックスやバッキンガム宮殿や衛兵や二階建てバスやらのキーホルダーやマグネットや鉛筆削り(令和に?)やスノードームやボールペンやらがうじゃっっと並んでいた。店員さんは例のごとく移民の方だった。以前は同じ場所で店員さんがコニチワーと話しかけてきて(本当に初手でコニチワーと言われた。昼間の人といい、なんで日本人だとすぐ見分けられるのだろう)少し話もできたのだが、今は話す余裕もないくらい人が多い。
あと、観光地周辺には人力車の自転車版みたいなのがたくさん並んでいた。人力車の車夫さんが引く部分が自転車になったのを想像して欲しい。ただしお客さんが乗る部分はゆめかわピンク色のふわふわのファーで全体を覆われてて、あちこちに取り付けられたカラフルなライトが点滅して、愉快なアコーディオン早弾き音楽やヒップホップを爆音でぶん流しながら道路を走る。全くもって意味が分からない。全然ロンドンぽくない。分からないけどとにかく面白すぎて、見かけるたびに大ウケしていた。
完全に観光客のための場所という感じだった。たった9年でかなり様変わりした。それだけ先進国単位で見れば豊かになった証拠だろうか、と思うが帰りの電車ではまたホームレスをたくさん見かけた。
なんだろうな、何かが良くなって何かが悪くなったんだろうな、とは思うけど、きっと悪い部分が悪化していい部分は洗練されただけで、それはつまり、差がひらいたというより、ひらく幅が広くなったんだろうな、と思った。
なんか暗い話がつづいたので、宿で起きた事件でも。
僕が泊まった宿は風呂トイレ共同の個室で、だから用を足したりシャワーを浴びたりという時は入口の鍵を閉めなきゃいけないんだけど、コンタクトを外すために洗面台にいたら思いっきり、鍵を閉め忘れたドアをガチャっと開けて、下半身タオルで巻いただけの半裸の黒人の兄ちゃんが入ってきた。
しもたーーーーーとなったのも遅い。お互い気まずくなって「………………Sorry.」と言われてドアを閉められた。ぐーーーーーー。ほんとごめん。
トイレじゃなくてコンタクト作業でよかった。でなかったら本当にシンプルにラッキースケベだった。そういえば僕、留学先の寮でも共同のトイレのドア閉め忘れて隣の部屋の女の子が入ってきたことあったな……。
めちゃめちゃ平謝りしながら外に出てバスルームをゆずり、自分の部屋に戻ったら兄ちゃんが戻ってきたのは、ドアの音からして隣だった。うわーーーーー。
心の中でさらに謝りながら部屋でモバイルバッテリーの充電をしようと試みていた、ら、隣の部屋、兄ちゃんの部屋から、まあ、おっぱじめた声がめちゃめちゃに響いてきまして。……………………………はい。
おっぱじめ度が凄すぎて、なんかもう、演技100%なんじゃないかってぐらい、音と声が、ねぇ。
あぁだからタオル一丁だったのなー、ほんまごめんなー、とか思いおっぱじめサウンドを聞きながら僕はモバイルバッテリーの充電をするためにプラグ変換器をどうやったらイギリス式に変えられるのか分からなくて説明書をガサゴソしていた。うん。途中でさすがに気まずさMAXで、音をかき消すためにYouTubeつけたけども。
共同部屋がある宿ではちょっとの用事でもしっかり鍵を閉めましょう、というもうひとつの教訓を得たのでした(当たり前です)。
ヨーロッパをだいたい100日で旅してみた話 真朝 一 @marthamydear
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