令嬢転生 〜転生した時に得たチートのせいで悪役令嬢になってしまいましたがスローライフを目指します〜

黒犬狼藉

転生令嬢、10歳の誕生日

 転生、ソレは現代に生きる人間にとって大なり小なり輝かしく見える物である。

 故にそのジャンルも多い、異世界転生から始まり死霊転生や貴族転生。

 令嬢転生に悪役令嬢転生、令息転生に魔物転生。

 他にも様々だ、そしてその転生者は大抵チートを持っている。

 そして私も、チート持ちだ。


「だからと言って、これは困るのですけど……?」


 私のチートは、ある意味で二つ存在する。

 一つ目は転生する時に与えられたチートである『不運の美貌』と言うもの、純粋に顔がめちゃくちゃ良くなり運が最低値まで下がると言う代物。

 前世が史上最悪のブサイクだった、だから運がどれほど酷くなったとしても私はこれを選ぶべきだと思ったわけです。

 まぁ、その甲斐あってか望んだことは悉く成功しないが転生先が貴族というのもあって割と10歳ごろまでは満足に生きれた。


 そして問題はもう一つのリアルチートとでも言うべきチート、有り難さの割合の実感としてはコチラの方が遥かに上だ。

 そのチートとは、私は才能が規格外だったと言うだけのチートである。

 聞いてもらってて申し訳ないのだが、前述のチートなんか霞むほどにこの才能というチートは凄い。

 魔力を認識できるようになり、転生者としての実力を振るうこととなった4歳の頃に初めて自分を客観視し恐怖に慄いたものだ。

 最初に私の魔力は膨大である、当時4歳の頃ですらそこらの魔術師を凌駕しており記憶が完全に戻る前に魔力測定とかしていたのなら王宮に運ばれ宮廷魔術師として洗脳。

 もとい、教育されていたことだろう。

 この一点ですら私は規格外であるのにも関わらず、私の才能はまだまだ規格外を誇る。

 

 次に私はこの世界に存在するあらゆる属性を扱える、これには妖精などの他者に協力を願うパターンの魔法も該当してしまっている。

 理由も明白だ、こっちに関しては美貌が悪さをしているのだ。

 私はチートで作った美貌なだけあって相当に美しい、今は10歳なのだがソレでも完成された彫刻以上の芸術品と言えるだろう。

 そしてそのチートは凡ゆる存在に通用するらしく、価値観の違うはずの妖精や悪魔に天使にも好かれるし恋される。

 例外はそもそもチートを認識できる竜などの上位生物と、美しさの概念を知らないモンスターのみ。

 

 まぁ、そんな私だが……。

 今私の10歳を祝う社交界であるのに、目の前で婚約破棄が行われている。

 それも、王太子Aと男爵令嬢Aの婚約破棄らしい。

 悪いという意味だが噂は予々聴いている、ハッキリ言って眉目秀麗なだけの王太子などまっさら御免だ。

 婚約破棄騒動などハッキリ言って私の預かり知らないところでやって欲しい、一応社交会にほとんどでないこんなのでも『深窓の令嬢』とか持て囃されている公爵令嬢の誕生日会でやることじゃないでしょう。


 あ、言い忘れてました。

 私の自己紹介をしますね? 私はこのオーグルク王国の公爵令嬢、一応長女をやらせて頂いているフェリアー・ノース・ナースと申します。

 生前は骨格異常で顔にとどまらず身体中が歪んでおりまともに生活もできなかった女ですが、今生は太々しくゆっくり行きたいスローライフ志望の転生者です。

 どうぞよろしく!! あ、元気キャラは私の解釈違い、私は深窓の令嬢よ分かった? 私。

 そんなふうに自己暗示を自分に掛けつつ、ぼーっと見ていると急に私の名前が呼ばれる。


「ハッキリ言おう、君みたいな不細工なんて嫌いだったんだ!! だが君の家に『英雄』ヴォルフガングが生まれたせいで僕は君と婚約しなければならなかったんだよ!! 僕が本当に好きなのはお前みたいなブスじゃない!! フェリアー・ノース・ナース嬢なんだ!!」


 え、えぇ……。

 や、やめてぇ。

 私のために争わないでぇ……、いや本当にお願いだから。

 家の価値なんて精々が知れているし、私も二十歳になったら出奔予定なの!!

 王族と結婚なんかしたら私に価値ができてしまうじゃないの!! マジでやめて。

 有り難くないし、嬉しくないし、別段悪女になりたい訳でもないのよ!!

 ほ、ほら、横の女の子すっごい可愛いじゃない!!(私には到底及ばないけど。)

 その子で我慢しなさいよ!! 私なんて選んでも大した価値はないわよ!?


 というか、ここで婚約破棄騒動を起こしたのはこの為か!!(名推理)

 そりゃそうよね、誕生日プレゼントは王太子ってなればそこら辺の令嬢なら物凄く喜ぶわよね。

 いや常識持ちなさいよ、王太子!! 何で振ったの!? そもそも私の方に根回しされていないわよ!?

 こう言うのって長い長い恋文を送るものじゃないの? 私のところにそんな手紙来た覚えが……。


 あ、あの親父ぃ!! 私に見せずに勝手に返したわね!? 私の才能は私自身が隠し通しているし、その真実を私以外は知らないから私には政略結婚の価値しかないと勝手に判断した親父が勝手に王家に返信したのね!?

 嫌じゃ、嫌じゃ!! 結婚なんてしとうない!!

 婚約したら社交界に行って、うふふあははってお淑やかに笑わなきゃいけないのよ!?

 その面倒くささもあって出不精気味の私なのに、そんな事しちゃうの? 正気なのお父様!!


「ま、待ってください。リースドリッヒ王太子様、ソレは些か問題となるのでは……?」

「問題などない、すでに私が全て取り計らっている。ソレとも、王家の意向に文句があるというのか?」


 意訳はコレね、『黙れ木端貴族、お前の話なんか聞くに値しない。俺が考えた計画は完璧なんだ、お前が口を挟む余地なんか無いよバーカ。ソレとも王家に逆らって処罰されたいのか? こっちは王族だぞ?』

 うん最悪、これを聴いてバカ親父も慌ててるわね。

 王太子といえども今この状況ではただの一人の貴族と同じ権限しか持っていないのよ? 下手すればソレ以下もありえるわ。

 うーん、どうしましょう。

 純粋に断るのは簡単なのだけど、不運のせいで大抵の行動は裏目に出やすいのねぇ。

 ここで断れば古くて血が濃いだけの弱小貴族である私たちが攻撃されかねない、下手すれば追放からの奴隷落ちもありうるわね。

 面倒ごとになるのは論外だし……、けど否定してもしなくても面倒ごとだしぃ……。

 仕方ない、一旦ここはバカ王子の婚約を受けましょうか。

 一縷の可能性で、私の美貌にバカ王子がなれるかもしれないし。

 

「ええ、喜んで。お受けいたしましょう、その婚約を。」


 泣き崩れている彼女だけど、是非とも取り返して欲しいわね。

 私から取り返すのは相当の難易度でしょうけど、いや本当に。

 頑張ってください、私の平穏のためにも!!


 アッ、ダメそう。

 あの目完全に私を恨んでる目じゃない!! 終わったぁ……。

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令嬢転生 〜転生した時に得たチートのせいで悪役令嬢になってしまいましたがスローライフを目指します〜 黒犬狼藉 @KRouzeki

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