第2話 転移と違和感
目を覚ましたカイリは、見知らぬ風景の中にいた。周囲には広大な森が広がり、見たことのない植物が生い茂っている。目を覚ました他の4人も、同様に呆然とした表情で立ち尽くしていた。
「ここは…どこ?」カイリが呆然と呟く。
「どうやら、異世界に来てしまったみたいだな」ユウマが状況を整理する。
「まさか、本当に異世界なんて…」リツカが驚きを隠せない。
「でも、なんだか面白そうじゃない?」ミライが冒険心を抑えきれずに言う。
「でも、どうしたらいいのかわからないよ」ハルトが不安げに呟く。
突然、木々の間からローブで身を隠した人物が現れた。顔は深くフードに隠されて見えないが、声の調子から高齢であることがわかる。
「あなたたち、ついてきなさい」ローブの人物が低い声で言う。
「誰だ?何者だ?」カイリが警戒しながら尋ねる。
「質問は後にしなさい。今はついてくるのが賢明だ」
その声に何かしらの力を感じ、5人は互いに顔を見合わせた。
「とにかく、ここに留まっても仕方ない。ついていこう」ユウマが率先して言い、他の4人もそれに従った。
ローブの人物に導かれ、5人は森を抜けて広がる平原を進んだ。やがて、壮大な王城が遠くに見えてきた。
「すごい…本物の城だ」ミライが感嘆の声を漏らす。
「まるで映画の中にいるみたいだな」ハルトが興奮気味に言う。
「でも、警戒は怠らないように」リツカが冷静に注意を促した。
ローブの人物は、黙々と歩き続け、やがて城の大門に到着した。門番が彼らを通し、5人は王城の中へと案内された。
大広間に通されると、そこには豪華な玉座があり、王が待ち構えていた。年老いた王は、5人を見て微笑んだ。
「ようこそ、異世界からの旅人たち。私はこの国の王、レオナルトだ」
「どうして私たちがここにいるんですか?」カイリが尋ねる。
「それは、この世界に迫る危機に関係しているのだ。実は、我が国は魔王によって支配されつつある。彼を倒すためには、異世界からの勇者が必要だと予言されているのだ」
王は慎重に言葉を選びながら説明した。
「でも、どうして私たちが選ばれたの?」ミライが不思議そうに尋ねる。
「それには、この世界とあなた方の世界に協力者がいたことが関係しているのだ」
「協力者…?まさか、日本に魔法使いがいるなんて…」リツカが驚きを隠せない。
「そうなのだ。その協力者が、あなた方をこちらの世界に転移させたのだ」
王は5人に準備金として一袋の金貨を渡し、一晩城内で過ごすようにと指示した。
「一晩ここで過ごし、翌日からどうするかを考えてほしい。そして、どうか我が国を救うために力を貸してほしい」
カイリたちはそれぞれの部屋に案内され、しばらくの間、異世界での状況を整理しようとした。
それぞれの部屋で静かな夜を迎えた。カイリは窓から見える美しい夜景に目を奪われながら、これからのことを考えていた。ミライはベッドに座りながら、ここに来るまでの出来事を思い返していた。ユウマはベッドに横たわり、これからの冒険に胸を高鳴らせていた。リツカは机に向かい、手元のノートに思考を整理するためのメモを書き込んでいた。ハルトは天井を見上げながら、自分たちの役割について考えていた。
「明日、みんなでどうするか話し合わないといけないな…」カイリは小さな声でつぶやいた。
朝日が昇り、5人はそれぞれの部屋から集まって大広間に向かった。朝食が用意されており、彼らはそれを食べながらこれからの計画を話し合った。
「まずは、この世界のことをもっと知る必要があるわね」リツカが冷静に言う。
「そうだな。情報を集めることが最優先だ」カイリが頷く。
「でも、そのためにはどうしたらいいんだろう?」ミライが不安そうに尋ねる。
「とりあえず、城の外に出てみよう。この国の人々と話をするのが一番だ」ユウマが提案する。
「そうだな。それに、冒険ってものもしてみたいし!」ハルトが楽しげに言う。
朝食を終えた5人は、準備を整え城を後にした。門の前で彼らを見送る王に、一礼して出発した。
「皆さん、どうかお気をつけて。そして、私たちの国を救ってください」王は深く頭を下げて言った。
「任せてください。私たちもこの世界をもっと知りたいし、力を尽くします」カイリが力強く答えた。
5人は未知の世界へと歩み出し、新たな冒険の一歩を踏み出した。彼らはこれから待ち受ける試練や困難を乗り越えながら、この世界の運命を変えるために力を合わせて戦うことになるのだった。
天空の紡ぎ手と恋の航路 あらやん @arataworks
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