無季
常温の母の眉毛にだけふれて
常温の母の眉毛にだけふれて
常温です。平熱ではありません。
僕はだいぶ前に母を亡くしているのですが、母が他界した夜、僕は遠い東京に住んでいて、最期に間に合いませんでした。
故郷に戻り、横たわる母の傍に腰を下ろした時、深く溜息を吐いて、やわく眉毛を撫でただけでした。縋り付いて泣く、ということすら思いつきませんでした。とある五月のことでした。
昔のテレビドラマなんかだと、よく、死体がいかに冷たいか? みたいな話をします。一つそういう表現が出てそれがキャッチーだったりすると、後追いするように、漫画やアニメ、小説でも「死体が冷たい」みたいなことを言う場面が描かれまくります。
そうじゃないんです。そりゃ、冬場の死体は冷たいかもしれませんよ? でも、春や夏場の遺体は、とりたてて冷たくはありません。常温なんです。
この俳句は無季ですが、僕なりの、ありったけの詩性を込めました。母の眉に触れた時の、気がふれるような、言いようのないの虚無感みたいなものが少しでも伝わったのなら、俳句になっているのだろうと思います。
ここでこの作品はおしまいです。一つでも、読者さんの心に触れる俳句を詠めていたら嬉しく思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 俳句の部 真田宗治 @bokusatukun
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