タイムリミットは、◯時間!時間感覚がわからなくなってきた勇者が、ピンチです!

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 勇者様、それは「放置プレイ」ではありません!緊張感をもって、聞いてください!ゆるいなー。

異世界のゆる勇者が、ゆるすぎて困っています。

「勇者様?」

「勇者様?」

「何だよ、皆?」

「早く、魔王城に向かわなくて良いんですか?」

「…え、どゆこと?」

ゆる勇者が仲間に聞けば、魔王が、引っ越しをする気配を見せているという。

「勇者様、お聞きください!」

まじめな情報屋仲間が、勇者に伝令。

「勇者様!魔王は、今から1ヶ月後に引っ越しをするとのことです!」

おお、ビッグニュース!

緊張感たっぷりの、内容だ。

引っ越しされてしまったら、魔王の居場所がつかめなくなってしまうかもしれない。倒しに、いけなくなってしまうかもしれない。

聞けて、良かった。

何と、良い情報だろう。

が、ゆる勇者のほうに緊張感はない。

ゆるゆる感覚。

「え、1ヶ月?まだ、1ヶ月もあるの?じゃあ、余裕で対策がとれそうだな」

そう、思っているんだものな。

ゆる勇者は、時間感覚がゆるすぎ。

「まだ、1ヶ月ある」

それを、こう考えているらしい。

「まだ、24時間(1日のことね)×30日や31日(1ヶ月のことね)も残っている」

その計算で出る答えは、700時間以上。

だから、こうも思っているんだろうな。

「まだ、700時間以上もある。焦らなくても、良いや。つか、焦る意味がわからない。余裕、余裕!」

でも、その考えで良いのか?

「食べたり寝たり、ネットを見たり、友だちと遊んだりする時間をのぞけば、残りは少ない。魔王に引っ越される前に攻めるための持ち時間は、100時間を切っているはず」

それを、わかっているのか?

「倒すべき敵が、見えない…。いやだなー。そういうの、考えたくないよなー」

結局は、気持ちが逃げてしまっていた。

あるある。

こういうこと、あるよ。

モヤモヤとする気持ちを、何とかして抑え込もうというわけだ。

「忘れたいなー」

「ダメですよ、勇者様?」

「え、何?」

「忘れたい忘れたいって放置したら、不安がたまっていくだけです」

「放置プレイ?」

「…」

結局、1ヶ月経っても2ヶ月経っても、魔王たちが引っ越すことはなかった。

なぜか?

「どうせ、勇者たちはまだ攻めてこないでしょ?今すぐに引っ越ししなくても、良くね?スケジュール、延期で!ゲームして、遊ばない?」

敵もまた、ゆるかったので。



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