流行りのチャラさ

釣ール

減らしていくしかない

 美月みつきはワタシに諦めてる話をよくしてくる。


 嘘なのは分かる。

 でも嘘というよりは会話だ。


「若手はしっかりしってると歳上の人達はわざと言ってるけれど同世代くらいと話していた時の記憶なくなってるのかな?

 たとえば弾火もらいびがテストでは百点満点の解答をしていてもインターネットで裏垢うらあかならともかく表にみせるタイプのアカウントでたしかブログみたいなことができるやつ?

 あれで投稿してる内容なんて幼稚ようちだから。」


 チェックしてることに今さらツッコミはしない。

 むしろ弾火が小遣こづかいい目当てでこちらに紹介していたから。

 むしろワタシたちは弾火に言ってやりたい。


『『そんなにバカを売るなら他のSNS使えよ!!』』


 もちろんアナログでやればなんてアドバイスはしない。

 今は目立つ問題児もんだいじは少なくてこういう成績上位の問題児が特権を乱用している。


 かといって美月に完全同意も怖いし全て日常における会話なのだから愚痴も適当な話も下ネタもオフレコだからこそ楽しめるようになるべくセキュリティが保証されている場所で話している。


 産まれてこの方「生きやすい」と感じたこともないから戻る過去もないし。


螺北さひつが前に言ってたこと覚えてる?」


 螺北。

 菜権螺北なごんさひつはワタシたちと同じ高校一年生。

 オシャレで恋多き女子だったがワタシたちとは自然を感じるままに低予算で旅行をして食べられそうな動植物を詳しく教えてもらった。


 そして好戦的で肌の露出が多少多くても肉食動物と戦ってワタシたちを助けてくれた仲間思いの野生児。

 昔からそう。

 だが差別はしないで区別をしているからか、ワタシたちと行動する時は人並外れた嗅覚と感でキャッチセールスや犯罪者、危険生物や毒植物から何度救ってくれたか。


「今じゃあまり聞かないけれどアマゾネスって人達がいたらしい。

 なりたいな。

 あんなたくましい女性に。」


 ワタシはその時に「女の子を捨てられる?」と意地悪く言ってしまった。

 だが彼女はそれも気付いて「ケースバイケース」と答えられた時には降参していた。



 そんな螺北さひつが何を言っていただろう。

 ワタシは受験勉強やバイトで疲れてしまっていた。

 それに螺北はワタシたちを気遣ってくれていたからか「具体的に自分達のやり取りを思い出さなくてもいい。

 まあこんだけ楽しめばそうそう忘れられないか。」


 これはきっと違う記憶だ。

 都合がいい耳をしすぎた。


「ここからさっさと出ていって繰り返された衰退すいたいの歴史から去っていきたいってさ。

 あの子もう離島暮しで自慢してるみたいにグループトーク送ってる。

 しかも野生的なあの子らしく捨て端末でアウトドアインフルエンサーでもたどり着けない場所の中でメジャーなやつを。

 」


 でもワタシたちは知らない景色。

 憧れるなあ。

 彼女のトークは自慢じゃない。


 生きづらさを抱えて生きるワタシたちの癒し。

 こういうのでいい。

 って借り物の古い言葉が嫌いだから別の表現を使うとすれば


「こんなの見せられたら会いに行きたくなる。」


「でもあの子の彼は野生過ぎてついていけないけどいい?」


「面白いじゃん。

 近年ターザンとかやらないし。

 」


「ケイコ洋画楽しんでる?羨ましい。」


 環境的に観させられた映画の話をしただけなのに美月は目を輝かせている。


「恋をしたら考え変わるのかな。

 救世主螺北も。」


 すると美月はここが本題と思い出して欲しい螺北の言葉を伝える。


「がっつり手続き以上の結婚やら幸せなんて考えてないしそんなヤワじゃないからカレが出来ても遊びに来ていいよ。

 無理がない程度に!だって。

 」


 永遠に繋がれる関係なんてこの世にはないけれど、ワタシたちの間では信頼感があった。


 何度自然で死にかけたか。

 むしろ距離のとり方を三人で学んだ。

 彼といっても恋人だとか伴侶とかそんな薄っぺらい関係じゃなくてルームシェアっぽい共存なのだろう。


 それはそれで心配だけど逆に言えば自然現象を生きる仲間なのだ。


「心配する必要ない。

 いや、不安だらけかな。」


「ケースバイケース。

 そういうこと。」


 ワタシたち二人は限定的な場所で螺北の広く深い話を楽しんだ後、化石にならないように少しずつ行動範囲を広げるため高校生活やその先を乗り切る。


「じゃあサバゲーとは違うスリルを味わいに行く?ケイコ?」


「ちゃんと相性の良い男子か男性探さないと。

 これでも螺北に嫉妬しているから。」


「じゃあ切り拓こうか。」


 ワタシたちコンビも長く続いていきたい。

 ファッ〇ンをファッションで隠していくしかない世界で。

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