第17話 これから君と

「第4位 75番」


 表彰式では予選を突破した本戦出場者12人がステージに立ち、自由にポーズをしている。審査は終わっているため、お祭りのような雰囲気が漂う時間だ。


 選手は笑い合ったり、ときに隣の選手と体がぶつかりながらもポーズをして、楽しみながら結果を待つ。


 12位から順にコールされる。呼ばれた選手からポーズをやめて、後ろに抜けていく。


 4位までに僕は呼ばれていない。3位以上は確定だ。


「第3位 79番」


 隣の選手が呼ばれた。ファーストコールで呼ばれた選手のうちの一人だ。


 ステージの最前列には、僕とあと1人だけになった。もう審査は終わっているのにポーズに力が入る。僕を呼ぶな。67番を呼ぶな。


「第2位 80番」


 僕は呼ばれなかった。


 1位になったという喜びで涙が出そうになる。


 大きな拍手が湧き上がる。観客の大きな声援が聞こえる。


 観客席にいる凛は泣いている。僕は勝ったんだ。凛との約束を果たしたんだ。


「第1位 67番」


 僕は前に出て、トロフィーを受け取る。観客席の凛に向かって大きくトロフィーを持ち上げた。


 ◆◆◆


 表彰式が終わり、控え室から出たところで、凛が僕を待っていた。顔には泣いた跡が残っている。


 凛は僕に抱きついてきた。優勝できたという実感が湧いてくる。


「ありがとう。凛が応援してくれたおかげだよ」


 手にトロフィーを持っている僕は、凛を抱きしめられない。凛の後ろから駿と葵が近づいてきて、僕の手のトロフィーを持ってくれた。


 小さな声で「がんばれ」と言ってくれているようだ。


「涼くんは、約束を守ってくれたね」


 凛は上を向いて僕の顔を見つめて。


「次は、私が約束を守る番」


 僕にキスをした。


「ずっと待ってた。これからは、ずっと涼くんと一緒にいるから」


 凛に告白して、筋肉が足らないと言われた日から2年と3か月。苦しい日もあったけど、筋トレに打ち込んだ。大会で勝てるのか、自信を持てない日もあった。


 それでも凛のことを想えば筋トレは続けられた。彼女の笑顔が見たかった。


 凛への想いで筋肥大した大胸筋と、上腕二頭筋で、凛を優しく抱きしめた。


END



 最後までお読み頂き、ありがとうございました!よろしければ☆やコメントを頂けると嬉しいです。


 皆さんが筋トレで幸せになれますように。また、どこかで!

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告白した彼女は筋肉フェチだった!?筋肉をつけたら付き合ってくれると約束したから本気出す ネコる @nekoru

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