猫舌のドラゴン

羽間慧

猫舌のドラゴン

六歳の船長絵本をコンパスにくまなく探すよだかの星を


シンデレラ一曲だけでもお相手を君があの世へ戻る前に


透けた足に履かせる靴はないけれど君をきっと見つけるよまた


たそがれる乙女の髪にかざす花ゆらゆら揺れるたぬきのしっぽ


すだれ取り陽光浴びる秋の昼ひなたぼっこに河童も加わる


天空の人の授けた星くずは秋をたゆらうイチョウひとひら


本物が懐柔されてらニセモノに千超え師匠が菓子に釣られる


時間外労働の手当オートミールに砂糖たんまり


散らばった部品で遊ぶドラゴンに興味よ失せろと祈りを込める


大鍋で作ったカフェオレ猫舌のドラゴンちびちび飲み干してゆく


三日月のような破片は欠けた爪トランプめくったドラゴンの爪


ドラゴンと肩を並べてテイクオフきらきら光る砂も夜空も


つままれた大きな指に羽二枚もがれた痕だけ置き去りにした


掴めないガラスの奥にある羽が空を飛べない私の墓場


からくりの羽をお詫びに差し出したあいつと同じ瞳は優しい


もう少し橋の上から手を出して沈めてあげる水の底へと


正面で見つめてくれない意気地なし十三番目のあなたはここよ


幸せな夢をごらんよ吾輩が汝の魂食べ尽くすまで


遺されたデッサンはまだ味がする黒鉛混じりの生気吸い込む


足りないな君からもらった血の対価じっとしていてキスができない

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猫舌のドラゴン 羽間慧 @hazamakei

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