最終話 おかえりなさい
私の名前はノース。
200年以上生きているエルフの女。
冒険者を続けて100年を超えてるベテランだ。
職業は賢者。
私の恋人のカムイは人間で、私と同じスキル持ちの冒険者なんだけど
……とんでもない外れスキルなの。
何回も彼のスキルで救われているけど。
その後は1年間の苦しい時間が待っている。
彼のスキルが真価を発揮すると、誰にも彼の存在が知覚できなくなるから。
声だけは聞こえるけど、それもどこから聞こえるか分からない。
テレパシーみたいな感じなのだ。
全く……どうしてあんな人が好きになってしまったんだろうか。
最初は、私に対して馴れ馴れしい、私の半分も生きていないような生意気な人間だと思っていたのに。
それが段々変わって来て、彼の真面目さとか、努力家なところとか、情に厚いところとか。
そういう良いところが分かって来て。
見た目のパッとしなさも、純粋そうで爽やかな外見。
そういう風に思えるようになった。
そうなったときに、彼はスキルに覚醒し。
以後強敵に出会うたび、こんなことが起きてる。
彼、スキルを使う決断を誰にもしないんだもの。
後から思うと、彼の失敗が増えていたなと察知できるところがあったりするんだけど。
私はいつも気づかない。
……200年生きてても、大したことないんだな。
それをいつも思い知ってしまう。
……もっと賢く、有能な賢者になりたい。
私は彼の存在が感じられない1年間、自己研鑽に集中的に務めた。
幸い、ネクロス討伐の報酬で。
多額の報奨金と貴族の地位を与えてもらえたから、時間も余裕も沢山あったし。
お金と貴族の屋敷と、領地。
彼以外の全てがあるけど、一番大事な彼がいない。
1年経って、彼が元に戻ったら。
今度こそ、2度とあんな外れスキルを使わなくても良いようにするんだ。
「ノース、暗いところで『ランプの明かりで読書』は目に悪いよ」
そんな彼の声が聞こえてくるけど。
いつも「大丈夫よ」と返していた。
200年以上同じことを続けているけど、別に何ともなかったんだし。
そしてその日も、私は自宅の屋敷で本を読んでいた。
「ノース。夜に読書はやめとこうよ」
そんなとき、また彼の声が背後から聞こえてきた。
いつも通り「視力は落ちないから大丈夫だって言ってるでしょ」と返そうとして。
そのとき。
……彼の声に方向性を感じていることに気づいたんだ。
私は振り返る。
そこには彼がいた。
1年経って、少し老けたかもしれない彼が。
私は涙を堪えきれなかった。
そのまま、本を投げ出し。
彼に飛びつく。
こう言いながら。
「お帰りカムイ!」
「……ただいま。ノース」
外れスキル「格付けチェック」で俺は無双する。 XX @yamakawauminosuke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます