忌まわしき遺産

エンマ

忌まわしき遺産

涼介は、「呪いによって怪物に変えられる伝説がある」という話を聞いた。


「どうせまた、都市伝説の類だろう…」


そう思いながらも興味を惹かれ、その村に行ってみることにした。




涼介は、過疎が進み無人の村に足を踏み入れた。

思ったより建物は朽ちた様子もないものの、すでに自然に

飲み込まれつつあった。


「それでも、何か変だな」


その伝説によると、村は夜になると巨漢でただれた「化け物」が出るらしい。

今は、昼過ぎだから、噂を信じるならまだ猶予があることになる。




しばらく村を見て回っていると、役場と思われる建物の前に来た涼介は

軽いめまいを覚えた。


不安を感じつつも涼介は村役場に入ると、一か所だけ護符が

ベタベタと貼られたドアがあった。

壁に飾られた古い写真には、村の住人達の笑顔が写っていたが、

どこか空虚だった。



意を決してそのドアを力任せに開けてみると

地下に通じる階段があった。

階段の下…その先にある…井戸だ!


井戸の周囲にはいではいけない臭いが漂い、

何かドロドロとしたモノが溢れ出ている


涼介はそれを見て気が付いた。

きっと村人たちはこの井戸の中からあふれ出る異常なものに触れ変異し、

それが「化け物」を生み出したのだ。


「これを隠すために、彼らは護符で封印し、伝説として語り継いだのか…」



突然、涼介の体に激しい痛みが走った。

眼球が上の奥の方に行ってしまいそうなほどの痛みが走り

手足の毛穴に何か擦り込まれるような熱さが彼を焼いた。



「ああ、俺が次の伝説なのか」


彼の視界が暗くなり、意識が遠のいていく中で、

自分の手がただれていくのを感じた。

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忌まわしき遺産 エンマ @jizoemma

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