年玉神社の甘酒

あげあげぱん

第1話


 これは怖い話と言うよりは不思議な体験なのですが、聞いてください。


 数ヵ月前、というか元旦ですね。一月一日。僕は年越しのあとすぐに初詣へ行こうと行こうと思い家を出ました。


 ビールの缶をいくつか空にしてはいましたが近所の神社に行くくらいは簡単だと思っていたのです。ですが。


 酔っていたからなのか、僕は近所の神社を目指していたのに迷ってしまったのです。


 近所で道に迷っていつのまにか、僕はとある神社の前に立っていました。それ程は歩いていなかったはずなので、そこも家の近くでしょう。


 でも僕はその神社の存在は知りませんでした。年玉神社というそうです。お年玉みたいな名前だなって覚えています。


 毎年通っている神社ではありませんでしたが、せっかく前まで来たのだからと考え、僕はその神社で初詣をしてみようと決めました。


 年玉神社は見たところは小さな神社でしたが、人はちらほらと来ていましたし、社や地面はきれいに掃除されていました。適度な明かりがついていましたし、印象の良い場所だったことを覚えています。


 鳥居をくぐり、神社に足を踏み入れ、手を清めて、賽銭箱へ向かいました。人はちらほらといった程度でしたからほとんど待つことはありませんでした。ですから、あまりしっかりと見たわけではないのですが、狛犬の変わりに二体の狐の姿があったと思います。もしかしたらあの神社はお稲荷さまを祀っているのかもしれませんね。


 賽銭を済ませ、その後巫女さんから甘酒をもらいました。これが美味いのなんの。甘酒ってこんなにこくのある甘味を出せるのかって感動したほどですよ。ええ、神社で売っていた甘酒を買って帰りました。そこそこの値段はしましたけど、あれほど美味い甘酒のためなら、全く後悔のない買い物でした。


 そうして神社からでて、どうやって戻ったのかはいまいち覚えていません。いつのまにか家に帰っていた。そんな風にしか言えません。


 家に帰って、早速甘酒を呑もうと思いました。ですが、恥ずかしながらどんどんと呑んでしまい、気がついたときには瓶が空になっていました。僕はこれをまた呑みたいと思い、もう一度年玉神社に行こうと考えました。


 さて、ここからが不思議な話です。年玉神社にまた行きたいと思って、近所を探してみたんです。でも目的の神社は見つかりませんでした。まるで初めから存在しなかったかのように年玉神社は姿を消したのです。


 あれから数ヵ月が経ちました。いまだに年玉神社は見つかりません。でも、なんとなく、なんとなくですが予感があるんです。


 また元旦になれば年玉神社に行けるっていう不思議な予感が。

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年玉神社の甘酒 あげあげぱん @ageage2023

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