ミルク工場 🏭

上月くるを

ミルク工場 🏭



夜勤明けミルク工場に夏の雲

どれも美し花屋の棚の花の夏


直売の粒あんおやき青すだれ

虫食の小松菜なれど地味豊か


かきつばた庁舎の煉瓦浮かぶ池

インターの騒を夜つぴて山法師


熱の子に螢袋を摘んでやる

捩花の左ねぢれと右ねぢれ


単調なピアノの連打走り梅雨

沖縄忌言葉は詩なり声もまた


メロン買ふ言葉少なきわれなれば

月下美人やうやう肚を据ゑにけり


懸崖の湯宿に聴ける河鹿笛

黙契に家を守れる守宮かな


こつこつと均しならしや山椒魚

こつそりと出てはみたけど蟇蛙


糸とんぼ縁が濃いとか薄いとか

文字すでに艶をまとへる桜桃忌


夏座敷むかしのわれと今のわれ

ピアノあり少し萎れて夜の薔薇




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